クマ被害対策を強化、新「パッケージ」を策定

全国 災害

クマによる死者数が過去最多になるなど事態が深刻化していることを踏まえ、政府は11月14日に2回目の関係閣僚会議(議長=木原稔・内閣官房長官)*1を開いて、新たな「クマ被害対策施策パッケージ」をまとめた。自衛隊や警察による支援の拡大などに加え、狩猟免許を持つ自治体職員らを「ガバメントハンター」として確保・育成し、人の生活圏に侵入するクマの駆除や排除を徹底する。今年度(2025年度)補正予算や交付金などで必要経費を確保する方針だ。

環境省の調べによると、クマの推定個体数は、ヒグマが約1万2,000頭、ツキノワグマが4万2,000頭以上と増加傾向にある。分布域も拡大しており、とくに今秋はクマが市街地にも出没することが増えて死傷者数が増加している(参照)。このため政府は、昨年(2024年)4月に策定した「パッケージ」を見直して、対策を強化することにした。

クマによる人身被害者数の推移

森林・林業関係では、林内をはじめ現場で作業する従事者の安全確保の徹底や、針広混交林化などを通じた生活圏との“すみ分け”の促進、緩衝帯の整備、堅果類の豊凶調査に基づいたクマの出没傾向に関する情報発信などを新「パッケージ」に盛り込んだ。

クマの餌となる堅果類の豊凶調査を「交通整理」、有効活用が課題

林野庁と環境省は、新「パッケージ」に明記されたクマの餌となる堅果類の豊凶調査に関する仕組みを見直す。これまで民有林は都道府県、国有林は森林管理局が中心となって調査を行ってきたが、その手法や時期、公表の仕方などがバラバラだったため、統一性と整合性をとるようにする。

環境省は、都道府県からの報告に基づいてブナ・ミズナラ・コナラの着花結実情報をまとめており、森林総合研究所は各種データを集約した「ブナ等結実度データベース」を公開している。

「ブナ等結実度データベース」に掲載されている分布図

国有林では、中部森林管理局が管内(富山・長野・岐阜・愛知の4県)におけるブナ・ミズナラ・コナラの種子豊凶調査結果を9月24日に公表して、今秋は凶作もしくは不作であることを示した。

また、東北森林管理局は、ブナの実の結実状況を11月6日に公表し、管内(青森・岩手・宮城・秋田・山形の5県)の豊凶指数は1を下回り「大凶作」となっていることを明らかにした*2

今後は、これらの調査データなどをクマ被害対策に有効活用できるように、「交通整理を進めていく」(林野庁国有林野部)ことが課題になる。

(2025年11月14日取材)

(トップ画像=新しい「クマ被害対策施策パッケージ」の概要)

『林政ニュース』編集部

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