7.2.2. 内航船を利用して国産木材製品の広域輸送に取り組む瀬崎林業【健全で持続可能な原木・製品輸送の発展に向けて】

近畿地方 大阪府 研究 統計・調査

瀬崎林業株式会社は、主にチリや中国、ベトナムなどから木材製品を輸入し、中国や台湾、韓国向けに国産(日本産)の原木を輸出している木材商社である 。また、近年は国産の木材製品輸送にも注力しており、内航船を使って南九州産のスギ製品を首都圏に供給するルートなどを構築している。

事業者名瀬崎林業株式会社
代表者名遠野嘉之・代表取締役社長
所在地(都道府県)大阪市中央区西心斎橋2丁目15番地1号
創業年1908年
業種・アンケート種類製品製造事業者(NO.2)
年間製品取扱量
輸送主体委託
輸送手段トラック、内航船
ヒアリング対応者遠野嘉之・代表取締役社長

7.2.2.1.     九州地方等から首都圏へ木材製品を大量輸送

同社は、1908年に創業した老舗の木材商社である。現在は、チリの大手サプライヤー・アラウコ社から直接仕入れているラジアータパインを使った梱包材等の販売、中国・ベトナム等で生産された合板・LVLの輸入・販売、国産原木の輸出が事業の主軸になっている。

そうした中で同社は、2019年から内航船を利用して国産の木材製品を広域で輸送する事業を展開するようになった。誰もやっていない時期から先駆的に取り組んでいたが、2021年のウッドショック時に首都圏で木材製品が不足したことに対応して、内航船を使って九州地方からスギ製品を大量に供給できるようになったことが事業拡大の契機となった。以降、ウッドショックが沈静化してからも、市況の動向を注視しながら、内航船を利用して九州地方等から首都圏への木材製品を供給するルートを強化する方針をとっている。

同社によると、内航船を利用する最大のメリットは大量輸送ができることにある。現在は、隔月に1度のペースで499t級の内航船を利用している。

図7-2-2-1 川崎港で行っている内航船からの木材製品の荷下ろし
出典:川崎市内で調査チームが撮影(2023年9月)

7.2.2.2.     首都圏の拠点は15号埠頭と川崎港、横浜港、内陸にも倉庫屋根付き倉庫を整備

同社は、木材製品の首都圏における受け入れ場所として、主に東京港の15号地と川崎港等を利用している。15号地は、約20万m³もの木材製品をストックできる能力があり、そのスケールメリットを活かして物流に要するコストが比較的低く抑えられているが、何十社も合同で利用している。

同社が15号地とともに、重要拠点に位置づけている川崎港では、問屋でも商社でも珍しい同社専用倉庫を運営している。関東首都圏の港では1社専用木材利用としては最大規模である。川崎港はトラックの出入り口が2か所にあり、一方通行でスムーズに運行できるので、ドライバーは荷積み・荷下ろし等に関わる待機時間を削減できる。同社は、川崎港に木材製品を最大1万4,000m³保管している。

同社の川崎港の最大のメリットは、チリ産材、LVL、合板、スギ製品が同じ場所でトラックに積めることにある。15号地のように大手商社が輸入した木材を関東の問屋へ販売し、その問屋がエンドユーザーへトラックで積み込む際には、忙しい時には待機時間が2時間ほどあるが、川崎港の瀬崎専用倉庫では待ち時間がほとんどない。「物流の2024年問題」で厳しくなった待機時間と積込時間も労働時間になるという点では、同社の川崎港は大きなメリットとなっている。 木材製品は、その利回りの低さから港湾での取扱量が年々減少している傾向にある。しかし、同社は、「物流の2024年問題」を乗り越え、木材製品の安定供給を実現するために、全国各地の国産材産地で木材製品を確保し、内航船を利用して首都圏に供給する体制を一層強化・発展させる方針をとっている。

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(株)日本林業調査会

1954年創業。「林政ニュース」の編集・運営・発行をはじめ、森と木と人にかかわる専門書籍の発刊を行っている。

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