| 事業者名 | 西垣林業株式会社 |
| 代表者名 | 西垣雅史・代表取締役 |
| 所在地 | 奈良県桜井市大字戒重137 |
| 創業年 | 1912年 |
| 業種・アンケート種類 | 原木市売市場(NO.3) |
| 年間原木取扱量 | 約70,000m³(桜井本社原木市場) |
| 輸送主体 | 委託 |
| 輸送手段 | トラック、トレーラー |
| ヒアリング対応者 | 横谷圭二・専務執行役員 |
7.1.5.1. 国有林、社有林、小規模個人有林をとりまとめて効率化
同社の桜井本社にある原木市場では、年間約7万㎥に及ぶ原木の3割程度を競り売り、7割程度を付売り・協定販売で売り捌いている。

出典:https://www.nishigaki-lumber.co.jp/nishigaki#nishigaki3 西垣林業(2025/03/17閲覧)
『西垣林業について』
協定販売等に基づく山土場からの原木直送は、主に合板工場・チップ工場向けで、全取扱量の3割程度を占める。一方、製材工場向けの原木は、桜井本社の原木市場に集積し、販売先の各工場にトラックやトレーラーで輸送されている。
同社の年間原木取扱量のうち2万㎥は奈良県産材であり、そのうちの3,000m³程度はヘリコプター集材によって集荷した優良材である。優良材は、主に文化財建造物や寺社仏閣用などとして供給している(ヘリコプター集材の目安:2 m³/3分/回→40 m³/時間→240 m³/日(6時間稼働))。ヘリコプター集材が集中して行われる期間に、原木輸送用のトラックが不足するというこの地域特有の課題を抱えている。
原木輸送は外部の運送事業者に委託して行っているが、地域の原木輸送業者の減少やドライバーの高齢化、輸送費の高騰などの課題に直面している。これらの課題を引き起こしている要因として、原木の取扱量が小規模分散的で、年間を通じて安定しないことがある。具体的に素材生産量は、伐り旬である冬期10~3月を100とすると、夏期5~9月は60%程度に低下する。また、後継者育成の遅れや新規参入者の不在、設備投資の停滞なども課題の要因となっている。

出典:調査チームがヒアリング調査をもとに作成
そこで同社では、国有林のシステム販売、立木販売、社有林の事業と小規模個人有林の施業地を近隣でとりまとめ、その事業量・内容を委託業者と事前に共有することで取引の安定性と効率性の向上を図り、原木輸送業者の確保・維持を図っている。特に、個人有林の優良材は冬期に伐採・搬出が増加するため、夏期にはなるべく国有林や社有林の並材事業を行うなど、通年での事業量を平準化する体制構築に努めている。なお、集約化の規模は、1,000~3,000 m³程度の素材生産・搬出量を目安にしている。
7.1.5.2. 配送手配を事業所間で共有し往復便活用、優良材のマッチング目指す
さらに同社は、これまで現場の担当者が個別で行っていた原木や製品の配送手配を事業所間で共有し、荷の積み合わせや事業所間の往復便を活用することで、輸送の効率化と低コスト化を図っている、往復便は、原木については桜井→舞鶴、輸入製品については舞鶴→桜井などで手配している。
原木の輸送費に関しては、距離だけでなく、林道の状態(道の良し悪し)によって支払い金額を調整しており、運転技術を要する悪路での輸送については高い輸送料を支払っている。しかし、林道整備の不十分さに加えて林道内の橋の重量制限・老朽化などもあり、原木の輸送効率を一気に向上させてコストを低減するのは難しい状況にあり、長期的な取り組みが必要になっている。
同社は、原木の付加価値向上にも取り組んでいる。優良材については適切に評価できる買手がいないと合板やバイオマス用材として低価格で売られてしまうことがあるが、各地域で合板やチップ向けとされる原木を同社が市売りに出すと優良材として高価格で取引される事例もある。同社の担当者は、価値が評価されずに埋もれてしまっている優良材が多くあるはずと考えている。現在は各地域からの個別相談に対応している程度であるが、優良材の需要と供給のマッチングを、輸送コストを踏まえてより効率的にできる仕組みづくりが必要とされている。

出典:調査チームが桜井市で撮影(2025年2月)
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(株)日本林業調査会
1954年創業。「林政ニュース」の編集・運営・発行をはじめ、森と木と人にかかわる専門書籍の発刊を行っている。