7.3.5. 原木と木材製品を組み合わせて輸送ロスを解消する兵庫木材センター【健全で持続可能な原木・製品輸送の発展に向けて】

近畿地方 兵庫県 研究 統計・調査

協同組合兵庫木材センターは、年間約36万m3の原木を取り扱う関西圏を代表する林業事業体である[i]。約36万m3の原木のうち約8万m3を製材や集成材および背板チップに加工するとともに、6~7万tの原木チップも生産している。残りの約20万m3の原木は合板工場や梱包材工場などに販売している。

同センターは、原木輸送と木材製品輸送を組み合わせて往路と復路の両方で空荷をなくすとともに、主にトレーラーを使うことにより輸送コストを低く抑えている。「物流の2024年問題」への対応に先手を打つかたちで2023年秋には輸送運賃を10%値上げしており、運送業者との連携や信頼関係も強固になっている。

事業者名協同組合兵庫木材センター
代表者名八木数也・理事長
本社所在地兵庫県宍粟市一宮町安積字丸山217-20
創業年設立2008年 操業開始2010年
業種・アンケート種類製品製造事業者(No.2)
年間原木取扱量約360,000m3
製材工場の年間原木消費量約80,000m3
原木チップ工場の年間生産量60,000~70,000t
輸送手段陸送(10社程度に委託)
ヒアリング対応者八木数也・理事長

7.3.5.1.     毎日約50台の車両を使用、原木仕入先地域の運送業者とも連携

同センターの1日の原木輸送量は平均1,500 m3を超えるため、トレーラーを使用しても毎日50台程度の車両を確保し利用する必要があり、地元の中小規模の運送業者だけでは対応できない。

また、同センターの原木集荷圏は、近畿地方、中国地方を主体に、東は静岡県、西は島根県にまで広域に及んでいる。

そこで同センターでは、原木仕入先の地域の運送業者とも連携して、必要な輸送車両を確保している。

図7-3-5-1 大量の丸太が在庫された兵庫木材センターの土場
出典:宍粟市にて調査チームが撮影(2025年1月)

7.3.5.2.     同じ車両で原木も木材製品も輸送、空荷をなくす工夫を重ねる

同センターでは、木材製品の出荷時の帰り荷として原木を輸送したり、原木の集荷の帰り荷として合板工場や梱包材工場へ原木を輸送したり、これらの逆パターンの運送計画なども立てることで空荷の発生を防いでいる。空荷の解消は、輸送コストの低減だけでなく、委託先の運送業者によって事業の安定化にもつながっており、双方に利点がある。

通常、原木の輸送では荷台の両側にスタンションと呼ばれる棒状の支柱を設置し、荷崩れを防止している。特にグラップルの付いた車両は原木専用のものが多く、スタンションが設けられている。一方、木材製品を輸送する場合は、ウイング車(箱車)にリンギを敷き、その上に木材製品を載せてラッシングベルトで固定することが一般的である。このように原木と木材製品では、輸送車両のタイプやデザインが異なるので、兼用することはほとんど行われていない。

しかし、同センターでは、原木輸送に使用するトレーラーや大型トラックのスタンションを、木材製品を輸送する際にはリンギとして使用することにより、同じ車両で原木と木材製品を運べるように工夫している。

このような工夫により、原木市場から買い付けた原木を同センターまで運んだ後、帰り荷として同センターで製造した木材製品や、合板工場や梱包材工場向けの原木を輸送するということを行っている。

また、原木の集荷圏外にあるなどの理由で帰り荷の確保が難しい場合でも、関連事業者と連携したり、納品期日に余裕を持たせることによって、帰り荷ができるように努めている。

以上のように、同センターが中心となって原木と木材製品の流通が活発化しており、これが輸送時のロスを解消し、サプライチェーンを強靱化することにつながっている。


[i] https://hyogo-mokuzai.com/about/ (2025/03/17閲覧)『About』

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(株)日本林業調査会

1954年創業。「林政ニュース」の編集・運営・発行をはじめ、森と木と人にかかわる専門書籍の発刊を行っている。

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