7.2.3. 荷役作業まで手がける一貫体制で木材製品の船舶輸送を進める松本木材【健全で持続可能な原木・製品輸送の発展に向けて】

九州地方 熊本県 研究 統計・調査

熊本県荒尾市の松本木材株式会社は、木材製品のトラック輸送とともに、その立地特性を活かして船舶輸送の利用を進めている。同社は、船舶輸送に必要な港湾での荷役作業までを一貫して自社で行うことで、輸送システム全体の効率化を図っている。

事業者名松本木材株式会社
代表者名松本新一郎・代表取締役
所在地熊本県荒尾市大島新四ツ山1722-27
創業年1912年
業種・アンケート種類製品製造事業者(NO.2)
年間原木消費量250,000m³
輸送主体自社、委託
輸送手段トラック、船舶
ヒアリング対応者松本新一郎・代表取締役、石橋直寛・経営企画総務部

7.2.3.1.     トラックと内航船による複合的物流システムで関東圏にも輸送

同社の本社と工場は、熊本県荒尾市と福岡県大牟田市との県境に位置し、工場内を県境線が通っている。同社は、年間約25万m³の原木を消費する大規模な製材メーカーであり、主に住宅建築用の構造用材を製造している[i]。さらなる生産能力の拡大に向けて、新工場を建設中であり、2026年4月には完成する予定となっている。

同社が使用する原木は、九州一円から毎日フルトレーラー40台以上で搬入されてくる。製造した製品は自社便や委託トラック、そして内航船を組み合わせた複合的な物流システムによって関西圏のみならず関東圏にまで広域に輸送している。

同社が利用している内航船は、「明治日本の産業革命遺産」として世界文化遺産に登録された三池港から発着している。同社の工場から三池港までは車でわずか約5分という地理的近接性が、内航船を利用する上での優位性となっている。

内航船を利用する際の具体的な物流プロセスは、次のとおりである。

まず、埠頭と工場の間を自社トラックでピストン輸送し、1日かけて約1,500m³の製品を埠頭に集積する。そして翌日に、499t級の内航船に木材製品を積み込み、納品先に向けて出港する。

7.2.3.2.     地理的優位性、特別な荷役権限、専用区画の3条件が揃う

同社が内航船の利用を本格化させたのは約3年前であり、工場新設に伴う製品製造量の増加が契機となった。以降、同社が内航船による木材製品輸送を継続できている要因としては、次の3つの条件があげられる。

1. 地理的優位性:工場から三池港までわずか5分という近距離により、製品の「横持ち」(陸上での短距離輸送)コストが最小限に抑えられている。内航船輸送に伴う課題の1つである港までのアクセスコストを大幅に削減できている。

2.特別な荷役権限: 三池港は福岡県が所有・管理する公共埠頭であり、通常、荷役業務は三池港物流株式会社だけが実施できる。しかし、同社は、20年以上にわたる同港との信頼関係により、同社製品に限って荷役作業を同社が直接行える特別な許可を得ている。

3. 専用区画と設備の確保:三池港内に同社専用の区画があり、荷役作業用のグラップル2台も配備して、効率的かつ機動的な荷役作業が可能となっている。

以上の3条件の相乗効果により、内航船を利用した木材製品輸送のコスト削減とスケジュール管理の最適化が図られている。同社によれば、これら3条件のいずれか1つでも欠けると外注化が必要となり、内航船輸送の採算性は悪化するという。

図7-2-3-1 松本木材が利用する三池港の区画
出典:調査チームが大牟田市にて撮影(2025年1月撮影)

7.2.3.3.     スケールメリットを発揮し内航船の安定的確保を目指す

同社は、木材製品の大量かつ長距離の輸送においては、内航船の方がトラック輸送よりも優れたコストパフォーマンスを発揮すると評価している。ただし、近年の燃料費高騰に加え、船舶需要の増加が内航船の安定的な確保を困難にしている実態もある。同社は月に2〜3隻の内航船手配を希望しているが、2024年8月以降は1隻も確保できないことがあった。

このような状況を乗り越えていくためには、木材製品の出荷量を安定的に増やして、内航船を利用するメリットを関係者は共有できる体制をつくる必要がある。  同社が建設中の新工場が稼働を開始すれば、生産能力の拡大によるスケールメリットが発揮され、トラックと内航船を併用する物流システムの効率性向上につながると期待されている。


[i] https://matsumoto-mokuzai.com/company/ (2025/03/17閲覧)『会社概要』

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(株)日本林業調査会

1954年創業。「林政ニュース」の編集・運営・発行をはじめ、森と木と人にかかわる専門書籍の発刊を行っている。

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