木質バイオ発電を拡大、新エネルギー計画 2030年度に向け早生樹や広葉樹活用

2030年度に向けた国のエネルギー政策と地球温暖化対策の内容が明らかになった。木質バイオマスの利用拡大や森林吸収源対策の強化などが盛り込まれており、林業・木材産業の活性化を通じて数値目標などを達成することが求められている。

経済産業省は、7月21日に新しい「エネルギー基本計画」の素案を総合資源エネルギー調査会(経産相の諮問機関)に示し、再生可能エネルギー(再エネ)を主力電源化する方針を初めて打ち出した。

総発電量に占める各電源の割合(電源構成)の2030年度見通しを表1のように示し、再エネの目標値を現行計画の22~24%から36~38%に大きく引き上げた。

再エネのうち5%はバイオマスで賄うとしており、木質バイオマス発電の導入拡大を図るため、「森林・林業施策などの各種政策を総動員」すると明記した(表2参照)。

また、木質バイオマス発電の特徴として、「発電コストの大半を燃料費が占めている」ことを指摘、「燃料費の低減を進めることが課題」であり、「特に国産木質バイオマス燃料の供給拡大」が必要との認識を示した。具体的な取り組み事項については、①早生樹や広葉樹等の燃料材に適した樹種の選定、②地域に適した育林手法等の実証、③木質バイオマス燃料の品質規格の策定等による市場取引の活性化――などをあげ、「燃料費の低減と林業者の経営の安定化の両立を図る」ことを重点目標に据えた。

新・エネルギー基本計画は、10月頃に閣議決定される見通しとなっている。

吸収量2.7%確保を温暖化対策に明記、J-クレジット活用

7月26日には、政府が今秋の閣議決定を目指している新たな「地球温暖化対策計画」の案が公表された。「2050年カーボンニュートラル」を掲げる菅政権は、2030年度までに温室効果ガスを13年度比で46%削減する目標を立てている。これを達成するため同計画案では、産業活動や国民生活全般に関わる課題と目標を列挙。森林吸収源対策については、「約3,800万t-CO2(13年度総排出量比約2.7%)」の吸収量確保に向け、6月15日に閣議決定した新しい森林・林業基本計画*1の推進が必要とした。また、分野横断的な施策としてJ-クレジット制度*2の活性化をあげ、「森林経営活動等を通じた森林由来のクレジット創出拡大を図る」ことを記した。

新たなエネルギー基本計画と地球温暖化対策計画の案には、林野庁が重点を置く施策課題が一通り盛り込まれた。これを実現するための財源を、来年度(2022年度)予算要求を通じて獲得していくことになる。

*1新「森林・林業基本計画」と「全国森林計画」を閣議決定

*2森林のCO2吸収量の価値化へ、検討開始 J-クレジットを活用し収益機会を拡大

『林政ニュース』編集部

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