山火事対策の強化へ「林野火災注意報」を創設

全国 災害 法律・制度

消防庁と林野庁が設置した「大船渡市林野火災を踏まえた消防防災対策のあり方に関する検討会」(座長=関澤愛・NPO法人日本防火技術者協会理事長・元東京理科大学教授)*1*2は、6回に及んだ会合の成果をまとめた報告書を8月26日に公表した。新設する「林野火災注意報(仮称)」と、既存の警報を見直す「林野火災警報(仮称)」の発令などを通じて予防・警報体制を強化するとともに、延焼しにくい多様な林相への誘導や消火活動に必要な林道等の整備を進めて「林野火災に強い地域づくり」を実現すべきと提言した。

「林野火災警報」と併せて機動的に発令、多様な林相への誘導や防災林道の整備も

「林野火災注意報」は、消防庁が所管する火災予防条例を改正して創設し、具体的な指標を設定して、市町村に的確な発令を促す。また、「林野火災警報」は、消防法に基づく火災警報のうち林野火災予防を目的としたものの通称として用いる。

火災警報は、強い制限や罰則を伴うため発令を躊躇する傾向があることを踏まえ、より機動的に発令できる「林野火災注意報」を新設して運用面に柔軟性を持たせることにした(参照)。

一方、「林野火災に強い地域づくり」に関しては、一斉林の一部を異なるタイプの樹種に植え替えることや、病害虫被害木の早期除去などによって延焼の拡大防止を図るとともに、林道等と一体となった防火水槽や防火林帯の整備などによって山火事対策を強化する方針を示した。

大船渡市の最終延焼範囲は1965年以降最大、対策の即効性が求められる

2月26日に岩手県大船渡市で発生した林野火災*3の最終的な延焼範囲は約3,370haに及んで1965年以降最大規模となり、住家90棟・住家以外136棟が焼損するなど大きな被害が出た。出火原因は薪ストーブの煙突から出た火の粉と推定されているが具体的な発火源を特定するまでには至っていない。急速に延焼が拡大した要因として、降水量の減少による乾燥や火災初期の強風、複雑な地形などが影響したとみられている。

今年(2025年)は、大船渡市以外にも、山梨県大月市、熊本県南阿蘇村、岡山県岡山市、愛媛県今治市で焼損面積が100haを超える林野火災が起きた。

気候変動などによって山火事問題は新たな局面に入っており、即効性のある対策が求められている。条例改正と周知期間が必要な「林野火災注意報」の創設や、予算措置と住民合意が不可欠な「林野火災に強い地域づくり」が次の山火事シーズン(冬~春)に備えてどこまで進むのか、スピード感が問われる状況になっている。

(2022年8月26日取材)

(トップ画像=消防庁長官の大沢博氏(左端)に報告書を手渡す検討会座長の関澤愛氏(中央)と、林野庁次長の谷村栄二氏(右端))

『林政ニュース』編集部

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