スギチップからつくられる新素材「改質リグニン」*1*2の低コスト大量生産に向けた世界初の実証プラントが茨城県常陸太田市内に完成した。林野庁の補助事業を活用し、約13億円を投じて製造設備などを整備、年間約100tの改質リグニンを生産する。運営は、(株)リグノマテリア(東京都新宿区)や森林研究・整備機構(茨城県つくば市)など7者で構成する共同事業体が担う。改質リグニンは、化粧品原料や絶縁材、改質樹脂など様々な用途に使うことができ、石油化学製品に代わって脱炭素社会を担う新素材になると期待されている。
実証プラントは、原木市場や木材加工工場、木質バイオマス発電所が集積している宮の郷工業団地の中につくられた。6月30日の竣工式には、大井川和彦・茨城県知事をはじめ各界の要人が顔を揃え、7月19日には東京都内で竣工報告会も行われる。改質リグニンに関する議員連盟を立ち上げる動きもある。
改質リグニンプロジェクトを主導しているリグノマテリアの三浦善司社長は、「実証プラントはベンチプラントと商用プラントの中間に位置づけられる。今後、年産数千tから1~2万t規模の商用プラントを建設していく。そうしなければコスト競争力が出ない」と話しており、生産規模拡大に向けて、政府が創設した「グリーンイノベーション基金」(総額2兆円)の活用や、関連事業者が結集する「木質新素材普及産業会」の設立などを計画している。
三浦善司・リグノマテリア社長の話「改質リグニンの利用で中山間地域を活性化できるだけでなく、海外市場の開拓も可能になる。欧米の企業も取り組んでいるので、スピードが重要になる」
(2021年6月30日取材)
『林政ニュース』編集部
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