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新設の「林業機械部」が取り扱う「H6」が好調、導入台数が増える
新宮商行林業機械部の関東営業所が千葉県松戸市にある。新京成線のみのり台駅から10分ほど歩くと、周囲には倉庫や工場などが目立ってくる。その一画に、林業機械部の事務所があり、2階のショールームには、チェンソーや作業ウェア、草刈り機械、薪割り機、薪ストーブなど、同社が手がけるバラエティ豊かな製品が展示されている。

ただし、ここに並んではいないものの、同社の目玉製品となっているものがある。それがPONSSE社製のハーベスタヘッドだ。
今年(2025年)で創業55周年を迎えているPONSSE社は、様々なハーベスタヘッドを開発してきているが、日本の林業現場で最も使われているのは、13tクラスのベースマシンに対応している「H6」タイプ。担当の林業機械部課長・木原健吾氏は、「ここ5~6年で導入台数が増えてきており、専門のセクションで取り扱うことが必要になった」と好調さを口にする。
最大の特長は「パワーとスピード」、使い勝手を高めメンテもしやすく
では、ハーベスタヘッド「H6」の何が優れているのか――木原課長に尋ねると、「パワーとスピード」という即答が返ってきた。
その源となっているのが4つの油圧モーターと3つの送材ローラーだ。これらの駆動によって、造材作業などを高速でこなせる。「パワー不足の機械だと自動送材中に枝を払えずストップしてオペレーターが手作業で処理するケースがあるが、『H6』ならばある程度の太さの枝でも大丈夫」(木原課長)という。
また、測尺精度を高めるため、ユニット周辺に広い空間を確保しており、樹皮の詰まりを減らし、スリップによる誤差も抑えている。

使い勝手をよくしてメンテナンスなどを容易にする設計にも配慮しており、フレームにはスウェーデン鋼を使用して、軽量・小型ながら耐久性、耐腐食性を高めている。
コクピット(操縦席)でオペレーターがチェックする主な画面は日本語化されており、操作レバーのボタン配列は自分の好みに合わせて変更できる。また、消耗品である計測ローラーのギアは交換しやすい構造にして、手入れの負担を軽減している。
デジタル情報を駆使しオートバッキング、カラーマーキングも可能
「H6」は、材の径級や長さ、本数、伐採現場などの情報をデジタルデータで管理している。あらかじめ用途や樹種、太さ、長さ、単価などの情報を入力しておくと、ヘッドが掴んでいる材の太さから自動計算し、無駄なく付加価値が高くなるような採材の提案をする(オートバッキング機能)。
このようなICT(情報通信技術)に関わる機能は、オプションで上乗せしていくことができ、電子キャリパーを導入すると即尺精度が一段と高まる。
材の分別をわかりやすく示すカラーマーキング機能も加えることができ、樹種、径級、長さ、用途等に基づいて、赤、青、赤青、無色の4種類に色分けできる。このほかにも、全旋回ローテータやチェーングリスキットなど、多彩なオプションを用意している。

林業機械化を牽引して1世紀以上、グローバル企業と協業推進
新宮商行は、来年(2026年)で創業120周年に達する。
明治時代に、利光小三郎氏や坂口茂次郎氏ら和歌山県の「新宮」出身者が中心となって起業し、韓国鉄道院(当時)から鉄道枕木30万本の注文を受け、北海道の小樽区色内町(当時)に出張所を開いたのが事業発展のルーツとなっている。
1952(昭和27)年には、米国マッカラー社製のチェンソーを日本で初めて輸入販売し、林業機械化に先鞭をつけた。そして今、PONSSE社との協業により、日本林業のスマート化を牽引しようとしている。
最先端のハーベスタヘッドである「H6」は、「北海道での販売台数が最も多く、東北や九州が続いていたが、関東や中部でも導入事例が出てきた」(木原課長)という状況だ。PONSSE社製のハーベスタヘッドには、「H6」以外にも、小型・軽量タイプの「H5」や、中型サイズの「H7」、大径材にも対応可能な「H8」などがあり、ホイールマシンのハーベスタやフォワーダも製造している。

グローバル企業のPONSSE社は、世界各国に年間約1,000台の高性能林業機械を供給しており、圧倒的な存在感を放つ。木原課長は、「その実績やネットワークを活かして日本林業の発展に貢献したい」と話している。
(2025年3月6日取材)
(トップ画像=ハーベスタヘッド「H6」、画像提供:新宮商行)

『林政ニュース』編集部
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