最新解説・2025年度林野関係予算のポイント【緑風対談】

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最新解説・2025年度林野関係予算のポイント【緑風対談】

国の資金繰りをまとめた来年度(2025年度)当初予算(案)が昨年(2024年)12月27日に閣議決定されました。その中から林野関係予算のポイントを噛み砕いてお伝えします。

農政重視の中でも前年度予算規模を上回る、ただし「不断の見直しが必要」

政府の来年度(2025年度)当初予算(案)が昨年(2024年)12月27日に決定した*1。12月17日に成立した今年度(2024年度)補正予算と合わせて、一連の予算編成作業が終了し、各種施策・事業を進めるための財源が固まった。その中から林野関係予算のポイントを解説していこう。

まず、金額面の仕上りをみる。林野関係の25年度当初予算概算決定額は3,068億円、前年度当初予算比では2.2%の増。これに24年度補正予算の1,416億円*2を加えた総額では4,484億円、同1.8%の増となった。
25年度当初と24年度補正の両予算で前年度水準を上回ったことは“御の字”と言っていいだろう。昨年8月末の概算要求時に小欄で述べたように、今回の予算編成作業は農政重視の基調で進められた。農林水産省全体の予算が大きく増える状況ではない中で、農業分野への配分額を多くすると、林野予算にしわ寄せが及ぶことが懸念されていた*3。だが、結果的には所要額をきっちりとキープでき、林野庁幹部らは、「林政推進の重要性に理解が得られた。よかった」と口を揃える。
ただし、ある幹部は、「農政重視の中でも農業関係予算はそれほど伸びなかった。林野関係予算も不断の見直しを怠ると、いつ削られるかわからない」と気を引き締めている。

中核の公共事業(森林整備・治山)は3年ぶりに2,700億円台に乗せる

さて、今回も林野予算の中核を支えているのは一般公共事業(森林整備・治山事業)である。予算編成作業の結果、25年度当初予算で同o.2%増(3億円増)の1,880億円を確保するとともに、 「防災、減災・国土強靱化のための5か年加速化対策」(512億円)を含めた24年度補正予算で817億円を得たことなどで、目標額の2,600億円を突破し、2,735億円に達した。これが何と言っても大きかった。

林野公共予算の推移を振り返るとのようになる。2,700億円台に乗せたのは3年ぶりだ。
2,735億円という金額は、「5か年加速化対策」がスタートした5年前の21年度当初プラス20年度補正予算の2,887億円に次ぐ水準であり、関係者の表情からは満足感が漂う。自民党の森林整備・治山事業促進議員連盟(山口俊一会長)などによる政治的なプッシュも効いたようだ。

林野公共予算の推移

林野公共事業を推し進める財源が確保されたことで、昨年8月末時点の要求事項に盛り込んでいた幹線林道の開設・改良や、津波避難路を保全する予防治山対策などに着手する見通しがついた。自然災害が多発し、脱炭素化の観点からも森林整備・治山事業のテコ入れが求められている。2,735億円という予算を使って、これから林野公共事業の成果をいかに“見える化”していくか──国民の理解がさらに広がっていけば、15年前の3,107億円という金額も視野に入ってくるかもしれない。

唯一の新規「集約化モデル地域実証事業」に“望外”の5億円がつく

次にスポットをあてるのは、非公共の新規事業。といっても、今回は1つしかない。それは、「森林の集約化モデル地域実証事業」。3億円の必要経費を要求していたところ、何と5億円の予算が認められた。財務省の厳しい査定を経て、要求額を上回る予算がつくとは聞いたことがない。それだけの目玉事業なのだ。

この新規事業は、通常国会で改正を予定している森林経営管理法の実効性を高めるために、地域発のモデルとなる取り組みを支援するもの。では、どのような取り組みがモデルたり得るのか。林野庁が一例として示しているのが、島根県邑南町(おおなんちょう)のケースだ。
同町では、林業経営体からの提案を踏まえた上で、地域協議会が周辺の小規模分散森林を含めた意向調査や、公的分収林などを含めた路網計画を検討した結果、集約化の対象森林面積が9haから67haに増え、このうち21haで優良経営体への事業委託が進んでいる。

邑南町における集約化のイメージ

邑南町のような取り組みを広げるためには、情報共有や合意形成のノウハウを横展開する必要がある。人間関係や利害もからむ話なので簡単ではないだろうが、新規事業でいかに後押しできるかが注目点だ。
なお、林野庁は、予算が想定より2億円増額されたので、支援対象地域を増やすことを検討している。

このほかの非公共事業については、現行路線を継続するための経費が確保された。「集約化モデル」の新規事業を含めた「森林・林業・木材産業グリーン成長総合対策」の25年度当初予算額は144億円で、前年度並み。一時はシビアに減額査定されるとの観測が出ていたが、杞憂に終わった。同対策では、「林業・木材産業循環成長対策」(予算額は62億円)や「林業デジタル・イノベーション総合対策」(同3億円)、「森林・林業担い手育成総合対策」(同47億円)などのメニューを並べている。

最後にアクセントをつけたいのが「森林・山村地域活性化振興対策」。大臣折衝で要求どおりの10億円が認められた。従来の森林・山村多面的機能発揮対策をモデルチェンジして、新たに「半林半X」を支援対象に加えた。林政の幅を広げる事業になりそうだ。

(2024年12月27日取材)

詠み人知らず

どこの誰かは知らないけれど…聞けないことまで聞いてくる。一体あんたら何者か? いいえ、名乗るほどの者じゃあございません。どうか探さないでおくんなさい。

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