広い販路とデザイン力で国産材を活かすレグナテック【突撃レポート】

広い販路とデザイン力で国産材を活かすレグナテック【突撃レポート】

佐賀県佐賀市の諸富町周辺には、20に及ぶ家具メーカーや関連業者が集積しており、福岡県大川市と並ぶ家具産地を形成している。その中でひと際存在感を増しているのがレグナテック (株)(樺島雄大・代表取締役社長)だ。今年(2024年)で創業60周年を迎えている同社は、海外の約20か国に販路を広げてブランド力を高めながら、国産材の活用にも本腰を入れようとしている。(文中敬称略)

国内外で独自のブランドを展開、太良町産の高品質ヒノキを活用

「国内の里山にある広葉樹にはすごく興味があるし、使いたいですね」──レグナテックの専務取締役・樺島賢吾(34歳)は、明確に言う。

同社の年商は6億円余で、その約2割は輸出事業で稼ぎ出している。家具に使用している材料の大半は米国など海外から調達しており、国産材のウエイトは1割程度でしかない。だが、家具用材を巡る資源事情や環境問題を考慮すると、国産材の利活用を進めていく必要がある。

九州でもナラ枯れのコナラが増えており、地元の関係者からは、「長さ2~3mで末口30cm以上のコナラを製材してみたらホワイトオークとほとんど変わらなかった。安定的に調達できれば家具用材として十分使える」の声が出ている。

樺島が国産広葉樹に視線を注ぐのは、針葉樹のヒノキを使った家具づくりで実績を出しているからだ。同社は、県内の太良町で産出されるヒノキを用いた家具づくりに2020年頃から着手しており、主にオフィス用として「ROOT」のブランド名で販売している。また、海外向けのブランド「ARIAKE(有明)」のラインナップにもヒノキ家具を加えて、需要獲得を目指している。

海外向けブランド「ARIAKE(有明)」の製品

太良町は、長伐期で大径材を育てる「多良岳200年の森」づくりを推進しており*1、太良町森林組合は、葉枯らし・天然乾燥や自前の製材工場などを軸にして高品質なヒノキ製品を供給している。同社と太良町の“こだわり”が共鳴するかたちで、国産材を家具に用いて付加価値を高める取り組みが進んできている。

張物でスタートし高級家具ゾーンにシフト、クスノキも“看板”

東京でアジア初のオリンピックが開催された1964年に、レグナテックは産声を上げた。創業時の社名は、諸富マルニ木工(株)。立ち上げたのは、賢吾の祖父・樺島金蔵。金蔵は、夜具入れなど張物家具の製作・販売で同社の礎を築いた。

その後、1990年に賢吾の父である樺島雄大が2代目社長に就任し、社名をレグナテックに変更して、事業方針を大きく転換した。安価な家具を大量生産するのではなく、デザイン性を重視したハイセンスな家具づくりをメインに据え、ムク(無垢)材も積極的に使うようになった。併せて、海外市場の開拓にも乗り出した。この路線が今も貫徹されており、関係者らは、「(レグナテックは)高級家具のゾーンにシフトしている」と評する。

同社の社員は約50人。その7割は工場で勤務し、残り3割が営業や設計を担当している。外国のデザイナーやデザインスタジオと連携して新製品などを開発しており、輸出先はアジア中心に米国、欧州、オーストラリア、ニュージーランドなどへ広がっている。

スタイリッシュなデザイナー家具とともに同社の看板製品となっているのがクスノキ(楠)の一枚板を使ったテーブル類だ。クスノキは九州に多く自生しており、佐賀県の木(県木)にも指定されている。

本社ショールームに展示されているクスノキの一枚板

同社は、大川市で年に1回開かれる原木市でクスノキの丸太を競り落とし、板に加工して3年ほど天然乾燥してからテーブルの天板などに用いている。クスノキの荒々しさを伴った美しい木目は他の樹種にはないもので、全国から引き合いがあるという。

北欧が先導するトレンドにマッチさせながら需要開拓を目指す

国内と国外で家具メーカーとしての地歩を固めてきたレグナテックが国産材の利用を進める上でポイントになることは何か──樺島賢吾に問うと、デザイン力がカギを握るとの見方を示した。

「世界の家具マーケットを見渡すと、北欧諸国がかっこいいデザインのイメージを確立しており、材料にオークやブナを用いることが主流になっている」。

樺島は、このトレンドに国産材をマッチさせるには、まずヒノキがいいと言う。「海外では、弊社の家具と北欧のブランド家具を並べて展示・販売することがよく起きる。色の白いヒノキは、ヨーロピアンホワイトオークなどと合わせやすいし、特有の香りも好まれる」。

樺島賢吾・レグナテック専務取締役

では、国産針葉樹の代表格であるスギはどうか。「スギの色は和風のテイストが強くなるので、洋風の建物やスタイルに合わせるのは難しい。スギは強度もないので、圧縮加工をして補おうとすると価格が高くなってしまう」という見立てだ。ただし、「スギの軽さは長所になる。使い方を考える必要がある」とも言葉をつないだ。

九州に多いコナラについては、「北欧の家具などともテイストを合わせやすい。技術開発をしていけば、新しいブランドになる可能性がある」と期待を込めた。そして、「今は公共物件などのプロジェクトベースで国産材の家具を使うことが多いが、これから民間需要を拡大していくことを考えたい」と課題を口にした。

(2024年10月24日取材)

(トップ画像=太良町産ヒノキを使ったオフィス家具「ROOT」、写真提供:レグナテック))

『林政ニュース』編集部

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