国内外の木材製品を使い調達先を公開、最新技術・部材を活用
「Port Plus」の高さは44m、延床面積は3502.87m2。使用木材量は1,990m3で、このうち構造材が1,675m3、内装材が315m3となっている。国内外で生産された様々な木材製品を適材適所で利用しており、調達先も公開している(表参照)。

構造体には、木質耐火部材「オメガウッド」を採用。とくに1階柱には(株)シェルター(山形県山形市)から技術提供を得て開発した国内初の3時間耐火仕様の「オメガウッド」を用いている。
柱・梁を接合する“鍵”として開発したのが「剛接十字仕口ユニット」。GIR接合(接合ロッドと接着剤で木材を接合)と貫構造を組み合わせ、ドリフトピンで固定する。輸送効率を考慮し、1ユニットのサイズは縦横2.8mとした。
金物や接着剤の使用を控えたことで、解体もしやすい建築物となっている。

知を育むための多数の“仕掛け”、資材高騰でコスト差縮小
「Port Plus」のコンセプトは「これからの知を育む場」で、施設内には多数の“仕掛け”がある。研修スペースには、至るところに植物が設置されており、環境音や香り空調も使って“森林”を再現。研修用宿泊室の床や家具にはムク(無垢)材を使用し、壁や天井は左官仕上げにして、空間の快適性を高めている。

照明やブラインドなどは大型タッチパネルやタブレットで操作し、各種センサーで消費電力や睡眠の質などを“見える化”してエビデンスも集めている。施設や各部屋の入退室は顔認証システムで管理し、鍵は使わない。
「Port Plus」を設計した高山峻氏は、「木造が鉄骨造やRC造と並ぶような世界を実現したい」と言う。木造の建設コストは、鉄骨造やRC造と比べると約3割増しだったが、最近の資材価格の高騰で差が縮まってきており、「国内で調達できる材料には追い風となっている」との見方を示す。
建設業界も人手不足が深刻だ。高山氏は、「木造はプレファブ化によって竣工現場の負担を軽減でき、省力化の面でも大きなメリットがある。今後も高層木造建築物の可能性を追求していきたい」と話している。
(2022年5月20日取材)
(トップ画像=「Port Plus」の外観、1,990m3の木材を使うことで約1,652tの二酸化炭素(CO2)を固定できると試算されている)
『林政ニュース』編集部
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