下川町の熱電併給発電所が新体制で再出発 北の森グリーンエナジーが安定稼働を担う

下川町の熱電併給発電所が新体制で再出発 北の森グリーンエナジーが安定稼働を担う

北海道の下川町で2019年4月から稼働してきた熱電併給型の木質バイオマス発電所が来年(2025年)1月から新たな体制で再出発する。

同発電所は、三井物産(株)(東京都千代田区)と北海道電力(株)(札幌市)が共同出資して設立した北海道バイオマスエネルギー(株)(下川町)が運営してきた。だが、ウッドショックや製紙用チップの値上がりなどで燃料材の調達コストが上昇して赤字が嵩み、3月31日に稼働を停止した。

その後、発電事業継続のあり方が検討され、6月27日に下川運輸(株)(下川町)、三洋貿易(株)(東京都千代田区)、大日本ダイヤコンサルタント(株)(同)の3社が出資して北の森グリーンエナジー(株)(下川町、大藪吉郁社長)を設立。翌28日に、北海道バイオマスエネルギーと事業譲渡契約を締結し、発電所の運営を引き継いだ。同社は、来年1月の稼動再開に向けて体制整備を進めている。

燃料材の調達難で経営が悪化し、三井物産と北海道電力は撤退

下川町の熱電併給型木質バイオマス発電所は、大手総合商社の三井物産と電力大手7社の一角を占める北海道電力(株)が手がけるプロジェクトとして注目度が高かった。ただ、当初の計画では、電気は売電し、熱は同町が買い取ることを構想したものの、合意形成が進まず軌道修正を余儀なくされた。

政府から「環境モデル都市」(2008年)や「環境未来都市」(2011年)*1に指定されている同町は、「再生可能エネルギーの完全自給体制の確立」を政策の基本に据えて木質バイオマスの利用拡大に取り組んできた。そこに大手企業が参入することには抵抗感が強く、2017年7月の同町議会で関連の計画・予算案が否決されるという異例の経緯を辿った*2

その後、三井物産と北海道電力が出資した北海道バイオマスエネルギーは、基本的に同町との関わりを持たないかたちで発電所を操業してきたが、燃料材の調達難などで経営が行き詰った。同社に運転資金などを貸し付けていた(株)北洋銀行(札幌市)は、36億9,600万円の取り立て不能・取り立て遅延の恐れがあると4月1日に発表した。

結局、同社と三井物産及び北海道電力は、北の森グリーンエナジーに発電所の運営を託して木質バイオマス利用事業からは撤退することになった。

下川運輸・三洋貿易・大日本ダイヤコンサルタントが連携、人材を募集

新発足した北の森グリーンエナジーの資本金は8,050万円で、出資比率は下川運輸と三洋貿易がそれぞれ33.4%、大日本ダイヤコンサルタントが33.2%。下川運輸が現場のオペレーション、三洋貿易が熱電併給施設のメンテナンス、大日本ダイヤコンサルタントが経営管理全般を担当し、出力1,996.5kWの発電所を安定稼働させることを目指す。

発電所の再稼動にあたっては、雇用創出を図ることも主要課題に据えており、同社は人材(管理員・補助員など)を募集している。主な業務は、ペレットの製造管理及び施設管理で、建設機械などの資格を持っていることが望ましいが、採用後に取得することも可能。各種保険完備、昇給・賞与あり、週休2日制の条件で、年収は320万円からとしている。

下川運輸も重機オペレーターなどを募集しており、必要資格は北の森グリーンエナジーと同様。各種保険完備、昇給・賞与あり、社宅あり、4週6休制で、年収は340万円から。

問い合わせ等は、北の森グリーンエナジー(☎016554-2345、電子メール:kamada@kitanomori-green.com、担当者:鎌田)へ。

(2024年9月30日取材)

(トップ画像=下川町の熱電併給型木質バイオマス発電所の全景、未利用の間伐材をガス化して発電する方式をとっている

『林政ニュース』編集部

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