樹木や木材などの植物資源を構成している超極細繊維・セルロースナノファイバー(CNF)の実用化に向けた産官学の連携プロジェクトが動き出した。2030年までに1兆円規模の新市場を創出することを目指し、6月9日にオールジャパン体制のコンソーシアム「ナノセルロースフォーラム」が発足した。設立総会に来賓として出席した松島みどり・経済産業副大臣は、「CNFは無限の可能性を持っている。日本の豊かな森林資源を活用するためにも、国家的プロジェクトとして取り組みたい」と意欲を述べた。CNFを巡る国際間の競争が激化していることを踏まえ、取り組みを加速する。

CNFは、軽量でありながら鋼鉄の5倍以上の強さを持ち、熱による変形が少なく、森林資源を有効利用できる。自動車部品をはじめとした高強度材料や食品・医薬品の増粘材、フィルターなどの特殊材料に幅広く使用でき、産業界が実用化に向けた研究開発を進めている。とくに、国内の紙需要が縮小傾向にある製紙産業は、バイオマス産業に脱皮するための“切り札”にCNFを位置づけており、3月末には経済産業省がトップ画像のようなロードマップ(工程表)をまとめた。 日本はCNFの研究開発で世界のトップレベルにあるが、米国やフランス、スウェーデンなども実用化を急いでおり、ISO(国際標準化機構)でも規格化の検討が始まっている。このため「ナノセルロースフォーラム」に関係者が結集し、情報の収集と共有化、共同研究開発や事業化の推進、ISO制定に向けた国際交渉、人材の育成などを図ることにした。
なお、セルロースをナノレベルに精製した材料については、CNFのほか、セルロースナノクリスタル(CNC)などと呼ばれることもあり、現段階では「ナノセルロース」と総称されている。

(2014年6月9日取材)

『林政ニュース』編集部
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