【前編】「再造林率日本一」へ、林業県・宮崎で前例のない挑戦が始まる

【前編】「再造林率日本一」へ、林業県・宮崎で前例のない挑戦が始まる

林業先進地として知られる宮崎県で全国的にも、そして林政史的にも前例のない大きなスケールの新規プロジェクトが新年度(2024年度)からスタートする。目指すのは「再造林率日本一」。その全貌を2回にわたってお伝えする。

宮崎県の河野俊嗣知事は、2023年12月18日に川南町の(株)林田樹苗農園を訪れ、穂木採取やコンテナ苗生産の現状を学んだ(画像提供:宮崎県)

知事公約のプロジェクト実現へ基金創設、3年間で500ha増

宮崎県の河野俊嗣知事は、昨年(2023年)6月、「3つの日本一挑戦プロジェクト(①子ども・若者、②グリーン成長、③スポーツ観光)」に挑むと公約した。この中で②グリーン成長プロジェクトについては、「再造林率日本一」を目標に掲げ、2024年度から産・官・学と県民が一体となった抜本的な再造林対策「宮崎モデル」に着手するとした。 

公約を実現するための財源として30億円の「日本一挑戦プロジェクト推進基金」を創設し、来年度予算では②グリーン成長関連に8億7,000万円を計上、その一部を「宮崎モデル」に充てることにしている。プロジェクトの実施期間は、2026年度までの3年間。この間に、現在約2,100haの再造林面積を500ha増やす計画だ。

全国初の再造林推進条例を制定し「地域ネットワーク」も創設

全国平均の再造林率は3割から4割。その中で同県の再造林率は75%(2023年度)と高い。だが、32年間にわたってスギ素材生産量日本一を続けている同県では、年間の民有林皆伐面積が2,800haに達しており、そのほとんどは林道から近い「林業適地」で行われている。

再造林率は高くても、失われる「林業適地」は毎年約700~800haに達するとみられており、木材の安定供給と森林の公益的機能発揮を将来にわたって持続するためには、県を挙げた抜本的な再造林対策が求められていた。

こうした背景を踏まえて、「宮崎モデル」はのようなスキームで進めることにしている。様々な対策が盛り込まれている中で、最大の目玉となるのが「宮崎県再造林推進条例(仮称)」の制定だ。「再造林」に的を絞った条例は全国初であり、7月の施行を目指している。

「宮崎モデル」の概念図

また、県内の8森林組合を中心に、伐採・造林業者、市町村、県の出先機関が一致団結して「地域再造林推進ネットワーク」を創設し、同ネットワークが中核となって、再造林を強力に推進する体制を構築することにしている。(後編につづく)

(トップ画像=宮崎県の河野俊嗣知事は、自ら打ち出した公約「再造林率日本一」の達成に向けて、2023年11月22日に椎葉村の再造林現場を視察し、植え付け作業を体験した、画像提供=宮崎県)

『林政ニュース』編集部

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