【寄稿】「2015林業機械展」の印象と「フォレスター・ギャザリング」初開催の狙い

【寄稿】「2015林業機械展」の印象と「フォレスター・ギャザリング」初開催の狙い

10月11・12の両日、岐阜県高山市で「2015森林・林業・環境機械展示実演会」が行われ、約2万人が来場した。同機械展に参加し、自主企画イベント「フォレスター・ギャザリング」を初開催した相川高信氏(三菱UFJリサーチ&コンサルティング(株)主任研究員)からのレポートをお届けする。

内輪向けのイベントから“学びの質”を高める場へと進化

私にとって「機械展」の原点は、2007年に参加した「オーストロフォーマ」である。オーストロフォーマの魅力は、オーストリアを中心とした中欧の先端的な林業機械群が勢揃いする点にあるが、一番のポイントは、ほとんどの機械の実作業(稼働状況)を見学できることにある(ただし、参加者は広い林内を歩き回らなければならない)。高山市で開催された「機械展」も、複数のタワーヤーダの実演会が行われるなど、国際的な展示会を意識した内容だった。

スウェーデンで行われている「エルミアウッド林業機械展」とワールド・バイオエナジーの同時開催など、最近は会議やセミナーと機械実演会が連動する試みが出てきているが、今回の「機械展」でも、岐阜県とドイツとの協定関係を活かして、ロッテンブルク林業単科大学の教授によるバイオマス講演会やセミナーが実施されるなど、来場者の“学びの質”を高める工夫が随所に散りばめられていた。

会場内を歩いていると、家族連れの姿も多かった。とかく閉鎖的な林業界にあって、林業機械の迫力のある姿は、魅力的なコンテンツになりうるように思う。「機械展」は業界向けのイベントから、一般の人々が森林・林業の実情を知る“入り口”になってきている。

「我こそはフォレスター」が「ヨコ」のネットワーク強める

さて、私が「機械展」に参加したのは、発起人の1人として準備してきた「フォレスター・ギャザリング」を開催するためであった。

私は、2007年の森林施業プランナー研修以降、「森林・林業再生プラン」を契機に始まった准フォレスター研修など、人材育成に関する研修事業や資格制度の構築などに関与してきた。しかし、いくつかの地域の実態調査を通じて、フォレスターの認知度がまだまだ低いことを痛感している。日本においてフォレスターの社会的な役割を構築していくためには、従来の制度から一度離れて、個々のフォレスターの具体的な活動にフォーカスし、サポートする活動が必要である。全米フォレスター協会のように、行政、民間、教育研究機関など、所属は違っても同じフォレスターであるという認識の下に、「ヨコ」のネットワークを強化していくことが望まれる。

そこで、今年のはじめから気心の知れた仲間と議論を重ね、資格は問わず「我こそはフォレスター」と思う技術者同士の交流の場として「ギャザリング」を開催することにした。人が集まりやすいように「機械展」中の開催とし、岐阜県立森林文化アカデミーの後援も得て、会場の一隅を借りることができた。全くの手弁当での開催であり、フェイスブックなど費用のかからない媒体を中心に広報を行ったので、集客面は最後まで不安だった。だが当日は、林野庁、都道府県、市町村、民間事業体、森林組合など多様な所属から、50人以上の方に集まっていただくことができた。

ワールド・カフェ方式で議論を深める、来年も開催へ準備

「ギャザリング」では、ワールド・カフェというワークショップの手法を用いて、なるべく多くの人と同じテーブルで話す機会を確保し、「将来の森づくり」、「組織活性化」など6つのテーマで議論を行った。時間は限られていたが、集中力の高い対話が行われ、参加者の満足度も高かったと感じている。

たかだか2時間程度の「ギャザリング」で、直面している問題がすぐに解決するわけではない。しかし、仲間との対話や協同作業が組織や社会を変えていくきっかけになれば、今回のささやかな取り組みも小さくはない意味を持っているのではないか──来年も「ギャザリング」を開催できるように、準備していきたい。

ギャザリングで仲間の発表に聞き入る参加者

相川高信(森林政策アントレプレナー)

京都大学で森林生態学を専攻後、民間シンクタンクにおいて森林・林業分野の調査・コンサルティングに幅広く従事。特に、森林施業プランナー、森林総合監理士の研修・資格制度の構築・運営に関わる。2015年に「フォレスター・ギャザリング」を立ち上げ、現在も運営メンバーを担う。また、バイオエネルギーや気候変動の政策研究へと領域を広げながら、全国の林業仲間との交流を続け、新たなレイヤーでの制度を探求している。2016年、人材育成をテーマに、北海道大学大学院農学研究院より博士号を取得。著書に『先進国型林業の法則を探る』など。