飛騨市が「広葉樹天然生林の施業に関する基本方針」を策定

岐阜県 森林経営・管理

「広葉樹のまちづくり」に取り組んでいる岐阜県の飛騨市は、10月17日に「広葉樹天然生林の施業に関する基本方針―持続可能な森林管理と広葉樹生産のためのガイドライン―」を公表した。今年度(2022年度)中に、基本方針を推進するための支援制度も立ち上げる。

同市内の民有林の約7割はミズナラやブナを中心とした広葉樹林となっているが、施業を進める際の技術的な知見等が針葉樹林と比べて少なく、現場で役立つ実践的なノウハウなどが求められている。

そこで同市では、広葉樹のまちづくり推進アドバイザーや地域林政アドバイザー、試験研究機関などの有識者・専門家と協議を重ね、基本方針を作成した。林業振興課の担当者は、「まず私達が考える『広葉樹の森林づくり』についての基本方針を示した。これが完成形ということではなく、様々な意見を取り入れながら柔軟に見直していきたい」とバージョンアップを重ねていく姿勢を示している。

育成木施業をベースに“若返り”を推進、譲与税で支援制度も

飛騨市は、「広葉樹の森林づくり」の基本に、育成木施業を位置づけている。育成木施業は、将来的に価値が高くなると見込まれる優良木に焦点を当て、周囲の木を間伐して集中的な管理を行い、高品質な大径木を育てる手法。2012年にスイスから招聘したフォレスターに技術的指導を受けたことが契機となり、市有林で実践してきている。

ただ、これまで育成木施業を行ってきた中で課題も出てきており、とくに60年生から85年生の林分では伐採時にかかり木の発生割合が高まる傾向がある。このため基本方針では、高齢級林を対象に伐採審査基準に基づいた帯状択伐や列状間伐を行って天然更新を進め、広葉樹林の“若返り”を図りながら育成木施業の対象林分を広げていくことを推奨している。

同市は、基本方針で定めた天然更新や災害リスク評価に関する基準を満たした林分に対して一定の助成金を交付する支援制度を新設する準備を進めている。名称は、「広葉樹天然林の育成及び収穫に対する新たな支援制度(仮称)」とし、財源には森林環境譲与税を活用する予定だ。

助成対象となった林分については、同市が施業終了後から5年以内に天然更新の成否などを調べ、その結果をWEB上で公開する。担当者は、「広葉樹を使う企業などから『この木があった森林はしっかり更新されているのか』と聞かれることが増えてきた」と話しており、施業履歴などをオープンにしながら広葉樹林の利活用を進めていくことにしている。

(2022年10月17日取材)

『林政ニュース』編集部

1994年の創刊から31年目に突入! 皆様の手となり足となり、最新の耳寄り情報をお届けしてまいります。

この記事は有料記事(1079文字)です。
有料会員になると続きをお読みいただけます。
詳しくは下記会員プランについてをご参照ください。