林野庁次長に織田氏、技官ツートップは27年ぶり【2021年4月人事異動解説】

人事

林野庁次長に織田氏、技官ツートップは27年ぶり【2021年4月人事異動解説】

林野庁は4月26日付けで人事異動を発令し、空席となっていた次長に国有林野部長の織田央(ひろし)氏(昭和63年入庁・東大卒)が昇格した。また、国有林野部長には橘政行・計画課長(平成元年・岩手大)、その後任には関口高士・経営企画課長(平成2年・北大)がそれぞれ就任。3名はいずれも技官で、とくに新次長の織田氏は、技官長官の本郷浩二氏(昭和57年・京大)とともに“技官コンビ”でツートップを組む異例の体制となった。

昭和53年7月に次長制が発足して以来、長官と次長には技官と事務官が交代で就く“たすき掛け人事”が守られている。過去にこの慣例が破られたのは、平成6年8月から翌7年1月まで塚本隆久長官と高橋勲次長による技官コンビが組まれたときと、平成20年1月から7月まで井出道雄長官と皆川芳嗣次長がともに事務官だったとき。ごくレアケースにとどまる慣例破りを行うほど、今回の人事は慌ただしく決まった。

4月1日付けで事務官次長の浅川京子氏(昭和60年・東大)が農林水産研究所長に転じたときから、「指定職ポストの林野庁次長を空席にしたままでいいのか」という疑問の声は出ていた。官邸サイドからも対応を促されていたという。空席の長期化はポスト不要論につながる恐れもあることから、定石外の発令が行われたわけ。

織田央氏

次長に起用された織田氏は、本郷氏の次の技官長官筆頭候補として衆目の一致する63年組のエース。平成27年4月に年次を飛び越えるかたちで計画課長に抜擢登用され、以後も森林整備部長→国有林野部長と林政の中枢を担ってきた。次長昇格は既定路線であり、就任の抱負も「新しい『森林・林業基本計画』で示される方向性を着実に施策化していきたい」と淡々としたもの。大柄な体躯で、言動に漂う安定感は十分。No.2のポストに就き、そろそろ織田カラーを前面に出すことが期待される。58歳。

橘政行氏

織田氏の後任として国有林野部長に就いた橘氏も下馬評どおりの起用。計画課長が2年10か月と長きに及び、次のタイミングでの部長昇格が確実視されていた。橘氏は、国有林野部での勤務経験が豊富で、周囲の評は「国有林のことを知り尽くしている人」。もっとも本人は「よくそう言われるんですけどねえ」と飄々としたもの。肩肘張らない仕事ぶりに変わりはない。穏やかな人物で激するところは見たことがない。ただ、虫は苦手だという。

関口高士氏

橘氏からバトンを受けて計画課長席に座った関口氏は、経営企画課長を1年半で切り上げ、もう3つ目の課長となった。地声の大きさと開放的な人柄は、庁内の誰もが認めるところ。人事調整や各省協議にあたっても、周りが驚くほど開けっ広げにことを進めるが、何故か無事に解決できてしまうという人徳の持ち主。

なお、関口氏の後任発令はなく、橘部長が事務取扱をする。農林水産省の次の幹部異動は7月1日で、枝元真徹事務次官(昭和59年・東大)や本郷林野庁長官らが勇退するとの観測が強い。大掛かりな発令になりそうだが、そのときまで経営企画課長を空席のままにするのは実務上無理がある。「できるだけ早く人材を配置したい」(林野庁幹部)という状況になっている。

(2021年4月26日取材)

『林政ニュース』編集部

1994年の創刊から早30年! 皆様の手となり足となり、最新の耳寄り情報をお届けしていきます。

この記事は有料記事(1355文字)です。
有料会員になると続きをお読みいただけます。
詳しくは下記会員プランについてをご参照ください。