「木曽谷・伊那谷フォレストバレー」が始動 “知の拠点”目指しキックオフフォーラム

長野県 中部地方

「木曽谷・伊那谷フォレストバレー」が始動 “知の拠点”目指しキックオフフォーラム

長野県は、森林に恵まれ教育・試験研究機関などが集積している木曽谷・伊那谷一帯を「フォレストバレー」として整備するプロジェクトをスタートさせた。8月8日に木曽町文化交流センターで「木曽谷・伊那谷フォレストバレーキックオフフォーラム」を開催し、中部森林管理局長や市町村長をはじめ約200名が参加して、人材育成やイノベーション創出などに取り組むことを確認した。

フォーラムの冒頭、同県知事の阿部守一氏が挨拶に立ち、フォレストバレーを整備する目的などを説明。「人口減少に対応するには従来とは違うアプローチをしなければならない」と述べ、「1人1人の能力を高めるために学びの拠点を有機的に結びつけ、様々なイノベーションを起こしていく」と語った。

挨拶する阿部守一・長野県知事

続いて、信州大学名誉教授の植木達人氏がファシリテーターとなってトークセッションを実施。AGEMATSU LIVING Laboratory代表社員の小林信彦氏、(株)木曽ツリーワークス代表取締役の千村格氏、(株)やまとわ森事業部ディレクターの榎本浩実氏が登壇し、「上松町を木工の拠点として整備し、地域の木で稼げる仕組みをつくる」(小林氏)、「木曽で生まれた木が木曽の作家の手を経て人々の生活を豊かにすることを手伝いたい」(千村氏)、「伊那谷フォレストカレッジ(第649号参照)を通じて4年間で40名の移住関係者が生まれた」(榎本氏)など、最新の取り組み状況を伝えた。

「フォレストバレーが描く木や森の学びと企業の未来像」をテーマにトークセッションを行った

また、森林を活用したニュービジネス創出に向けて「信州森林サービス産業推進ネットワーク」を同日付けで設立し、一般会員の募集を始めた。同ネットワークのプロジェクト会員になると、県補助事業の利用などメリット措置が受けられる。

目指すは林業版「シリコンバレー」、民間資金を呼び込めるか

長野県は、昨年(2023年)3月に策定した新しい「森林づくり指針」で、木材生産量を80万m3台に増大させ、「稼げる林業」を実現するとの目標を掲げた。

「木曽谷・伊那谷フォレストバレー」は、この目標を達成するための“知の拠点”に位置づけられている。県の担当者は、「知事の公約であり、立ち上げ準備に6年間を費やした」と口にし、「米国のシリコンバレーのように、全国・海外から森や木について学びたい人が集まるところにしたい」と話す。

木曽谷・伊那谷には、信州大学農学部(南箕輪村)のほか県林業大学校(木曽町)、木曽青峰高校(同)、県上松技術専門校(上松町)、上伊那農業高校(同)などの教育機関が集積しており、塩尻市には試験研究部門を統括する県林業総合センターがある(トップ画像参照)。すでに“知”を高めるためのインフラは存在しており、阿部知事の言う「有機的な結びつけ」をいかに実現するかがプロジェクトの成否を左右しそうだ。

シリコンバレーには、アップルやグーグルなどのグローバル企業が拠点を置き、研究開発に巨額の資金を投入し続けている。「フォレストバレー」プロジェクトに駆動力をつけるためには、県予算などによる支援だけでなく、メジャー企業などの民間資金を引き込むことが必要になりそうだ。

(2024年8月8日取材)

『林政ニュース』編集部

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