100年使える高級扉などでスギ・ヒノキを活かすイマガワ【突撃レポート】

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100年使える高級扉などでスギ・ヒノキを活かすイマガワ【突撃レポート】

和室の減少やプラスチック・アルミ製品等のシェア拡大によって縮小を続けている木製建具市場。だがその中で、和風モダンな住宅にターゲットを絞って活路を見出している企業が岡山県津山市にある。美作地域のスギ・ヒノキのムク(無垢)材を使った高級扉や建具ユニットなどを製造・販売している(株)イマガワ(赤松洋一社長)だ。こだわりの逸品で独自の需要を掴んでいる同社の近況をお伝えする。

品質とデザインを重視、グッドデザイン賞の扉は30万円から

イマガワの看板商品は、2010年にグッドデザイン賞を受賞したスギ扉の「(れん)REN」。5mm板を等間隔で縦状に配置し、貫構造で固定した透かし格子扉で、京都工芸繊維大学の山本建太郎氏がデザインした。価格は約30万円(税抜き)からと、一般的な扉の倍程度に設定しているが、注文が途絶えることはない。

スギ扉の「(れん)REN」

同社はこのほかに、“縦ラインの美”を追求したスギの「新きざみ」シリーズや“気品の美”をコンセプトに据えたヒノキの「華音(かのん)」シリーズなどの高級扉に加え、各種の建具や造作材なども手がけている。建具は枠材とのユニット商品で、施工現場で組み立てれば、すぐに取り付けができる。

約20名が働く同社がポリシーとして掲げているのは、日本らしい美しさと耐久性を兼ね備えること。とくに素材にはこだわっており、調達する木材は無節材を基準に厳選している。

同社では、すべての製品について100年以上使えることを目指しており、金具についても100年の使用に耐えられるものを用いている。赤松洋一社長は、「弊社の製品は一見高く映るかもしれないが、100年単位でコストパフォーマンスを考えたらどちらが有利か、丁寧に説明するようにしている」と口にする。この姿勢が顧客から評価されているのだが、「『質』を重視して相応の価格に引き上げ、体制が整うまでには10年ぐらいかかった」と振り返る。

1998年に国産材へ転換、試行錯誤を重ねて価格を引き上げ

1949年に木工業者として創業したイマガワは、時代の流れとともに事業内容を変化させてきた。特注建具やアルミサッシなどをメイン製品に据え、南洋材を使った建具などを製造していた時期もあったが、良質な原木(丸太)の調達が難しくなり、違法伐採問題などが取り沙汰されるようになったため、1998年に国産材に転換した。2003年には、特注建具やアルミサッシなどの取り扱いをやめ、美作材による高級扉の製造・販売に注力し始めた。

赤松洋一・イマガワ社長

だが、大手デベロッパーからの依頼で初めて製造したムクの扉は、節が目立ち木目が揃っていないなど評判が芳しくなかった。これを反省の糧として試行錯誤を繰り返し、「直径60cmの原木を挽ける製材所と取引するようになってから品質が安定するようになった」と赤松社長は語る。ただし、「これだけでは競合製品との価格競争に巻き込まれてしまう」と判断し、「さらに質感を上げるため上小節の材を使い始めた」という。

当初は、値段据え置きで上小節のムク扉を製造・販売し、顧客の反応を半年間見続けた。そして、ニーズがあると見極めた赤松社長は、原材料費のコストアップ分を吸収すべく約2割の値上げを行った。このとき「営業からは『売れなくなる』と反対を受けた」が、値上げをしてみると、売れ行きに変わりはなかった。赤松社長は、「いい製品をつくれば市場に受け入れられる」と確信し、最後の“壁”といえるデザイン力のアップに挑んだ。その際、「社内だけでは“壁”を超えられないと考え、山本氏へデザインを依頼した」と経緯を話す。

同社は、2006年に経済産業省の「第1回地域資源活用支援事業」に採択され、山本氏とともに市場調査に約半年、商品開発に約1年を費やし、「漣REN」を2009年に発売。これがヒットし、高級路線を軌道に乗せることができた。

年約600棟分を手がけ連携強化、「津山家具」ブランド化へ

イマガワの製品の主たる販売先は全国の工務店。それも和風モダンな家づくりを得意とする工務店だ。同社は扉1つの納入から、住宅1棟の内装をコーディネートすることもあり、合わせて年間約600棟分を手がけている。

地元密着型の工務店は、施工力・技術力がある一方で、デザイン力などが弱い傾向がある。また、年間に建てる棟数が限られるため、施主(消費者)に見せられる施工例が少ないことも悩みのタネだ。

そこで同社は5年前に、取引先の工務店などを対象にした会員制のサービスを立ち上げ、新製品や施工例の画像を含めた資料やデータを提供するなど営業支援を進めている。全国に門戸を開いた施工例のコンテストも開催しており、今年(2022年)8月に実施したコンテストには約350点の応募があった。

「津山家具」のスギ格子ボード

同社は昨年(2021年)10月、地元の関連業者らと連携して新ブランド「津山家具」を立ち上げた。つやま産業支援センター(津山市)が企画し、山本氏の弟子である石井聖己氏がデザインを担当して、同社の建具ユニットにマッチした椅子や机などの製品ラインナップを拡充させている。

赤松社長は、「『津山家具』でより良い住空間を提案できれば、良質材の新たな需要がつくれる。それを製材所や山元への利益還元につなげられればWin(ウィン)Win(ウィン)の関係になる」と次の展開を睨んでいる。

(2022年12月10日取材)

(トップ画像=「施工例コンテスト2022」で最優秀賞を受賞した息吹木の家(株)(津山市)が施工した個人住宅)

『林政ニュース』編集部

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