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中古林業機械のオープンな“市場”を創る、月に10〜20台を売買
富士岡山運搬機は、2017年から高性能林業機械を中心とした中古林業機械の買い取りと販売を全国レベルで行っている。同社のサイトを訪れると、「林業機械の買取に自信があります!」のキャッチフレーズとともに、各種マシンの買い取り実績が価格を含めて掲載されている。これを見れば、誰でも中古林業機械を売買する際の相場感を掴むことができる。

同社が中古林業機械に関する情報を整備するまでは、人伝による水面下での取引が一般的だった。このため、売りたい人と買いたい人のマッチングが進まず、ベースマシンは売れてもアタッチメントは下取りされないなど、ムダでチグハグな取引が目立っていた。
しかし、同社が中古林業機械のオープンな“市場”をつくったことで、古いマシンの価値が客観的に評価され、流通するようになった。現在、同社では月に10〜20台の中古林業機械を売買している。
担当の本田裕二・建車事業部取締役部長は、「取引先からの要望があって中古林業機械の買い取りと販売を始めたが、想定以上に反響がある。補助金で購入したものの倉庫に眠っている機械が別の事業者の手に渡ると大活躍するというケースも少なくない」と話す。
2008年に林業機械のレンタルを開始、サポートサービスも充実
富士岡山運搬機は1965年に創業し、建設機械の販売やレンタル事業を中心に事業基盤を固めてきた。本社のほか岡山県と鳥取県に4つの支店を持ち、営業の拠点としている。また、日立建機日本(株)の特約店であり、三菱ロジスネクスト(株)の岡山県総代理店もつとめている。社員数は70名で、このうち30名が技術者だ。
同社が林業機械を本格的に取り扱うようになったのは、2008年のこと。顧客からの要望に応え、まず林業機械のレンタル事業に参入した。
林業機械のレンタル費用は高く、機械を使いこなせるオペレーターがいない事業者も多い。そこで、2013年に会員制サービス「富士フォレストサポート」を始めた。
同サービスは、当初30社でスタートし、現在は約60社が加盟する。年会費3万円を払うと、20〜30%の割引価格で林業機械がレンタルでき、年2回の定期講習会や特別研修会の受講、最新の情報提供などのサービスが受けられる。
同社が取引している林業機械メーカーは10社以上にのぼる。メーカー別に専任技術者を配置しており、個別にサポートしながら技術力の向上を図っている。
前期は過去最高の収益を達成、140台近い中古林業機械を販売
富士岡山運搬機は前期(2021年9月~2022年8月)、過去最高となる約55億円の収益を上げた。全国的に災害などが多かった影響で、建設・林業機械の需要が膨れ、同社への引き合いも増えた。機械導入にあたって即時償却できる税制の特例措置も新規投資を後押ししている。
昨年度は、建設・林業を合わせて合計655台の中古機械を販売した。このうち137台が林業機械で、売上額は約3億円となっている。
同社は中古の林業機械だけではなく、新品の林業機械も独自に買い付けて販売している。半導体不足の影響などで、林業機械は製造の遅れや価格高騰が起きており、メーカーとの取引実績がない場合は納期が未定になるケースもある。本田部長は、「これから林業を始めようという事業者のためにも、できるだけ在庫を持つようにしたい」と言う。
身の丈に合った機械を保有し、メンテナンスを続け“儲かる林業”へ
富士岡山運搬機の強みは、林業機械の販売とレンタルを両方手がけていることだ。それぞれのメリット・デメリットを熟知しており、顧客の要望や条件を踏まえて、最適な利用方法を提案している。
あえて本田部長に聞いてみた。林業機械を保有(購入)するか、レンタルするか、どちらが得かと。すると、しばし思案した後、「中古でもいいから購入をお勧めしている」との答えが返ってきた。
レンタルの場合は、機械のメンテナンス費用などが上乗せされるので、長期的にはコストアップ要因となる。本田部長は、「レンタルの場合は機械が資産にならない。購入すれば資産になり、不要になったら下取りに出せば収入になる。トータルで考えればレンタルより安くなる」との見方を示した。

では、中古と新品ではどちらがいいかと問うと、「身の丈にあった機械を選ぶことが一番重要。『スマホのように高性能・多機能を求めるのか? それともガラケーのようにシンプルな機能だけでいいのか?』といつも確かめるようにしている」と述べた。さらに、「始業点検、日常点検を欠かさずに行い、オペレーターが常に機械の状態を知り、いかに機械を壊さずに、自分達でメンテナンスをして、稼働率を上げるか。それこそが“儲かる林業”につながる」と指摘し、「もっと実績を増やして、全国で『林業機械なら富士岡山運搬機』と認知してもらえるようにしたい」と語調を強めた。
(2022年10月7日取材)
(トップ画像=富士岡山運搬機が在庫している中古の林業機械)

『林政ニュース』編集部
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