宇都宮市で「第64回全国竹の大会」を開く 「切り子さん」の所得向上で竹林整備推進

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宇都宮市で「第64回全国竹の大会」を開く 「切り子さん」の所得向上で竹林整備推進

全日本竹産業連合会(京都市、山﨑清登会長)は、「第64回全国竹の大会栃木県大会」を11月17・18日に宇都宮市内で開催した。「竹の可能性~竹林から分け与えられる資源の現代における利活用~」を大会テーマに掲げ、全国から約100人が参加した。

山﨑清登・全竹連会長

1日目は、JR宇都宮駅に直結しているライトキューブ宇都宮で式典などを実施。冒頭に挨拶した山﨑会長は、放置竹林の拡大問題に触れて、「竹の需要が減ったことが最大の原因であり、それによって切り子さんが生活できなくなった」と指摘、「もっと需要が高まって切り子さんの所得が上がれば、竹を切る人も増えて竹林の整備も進む」と述べた。

山﨑会長の挨拶に続き、来賓からの祝辞や功労者表彰、大会決議の採択などを行い、竹一株植えつけ運動として宇都宮市立ゆいの杜小学校(國谷優校長)に植竹目録を贈呈し、次期開催地の滋賀県に大会旗を継承した。

利用分野広がり参入企業など増加、「大きな壁は竹の購入問題」

式典後には、福岡大学教授の佐藤研一氏が「竹の先端利用」をテーマに基調講演を行い、竹材の利用分野が広がっている現状について具体例を挙げながら解説した。地盤・舗装工学が専門の佐藤氏は、竹チップ舗装材を開発したことが契機となって竹材の利活用に取り組むようになった。竹に関する様々な問い合わせや相談事に一元的に対応するため、2012年に民間企業などと連携して「竹イノベーション研究会」(福岡市)を設立。「ゆるくつながるプラットフォーム」を掲げている同研究会には多くの企業や研究機関、NPO・公益団体、行政機関などが集まってきており、現在の会員数は200を超え、関東・関西・中国地域に支部を設けるなどネットワークを拡大している。同研究会の会員が行っている多様な取り組みは、小冊子『竹の利活用技術』にまとめられて第3版を数え、ウェブサイトでも公開されている。

佐藤研一・竹イノベーション研究会代表

佐藤氏は、竹材の利活用を推進する上での課題として、「大きな壁となっているのが竹の購入問題」とし、「伐竹する人材育成と効率的な集荷方法の確立、保管場所の確保、流通コストの削減など川上から川下をつなぐトータルなシステムの構築が必要不可欠」と強調。「国の補助金投入や大企業からの投資も考慮した仕組みづくりが重要になる」と語った。

基調講演に続き、京都大学教授の柴田昌三氏がファシリテーターとなってシンポジウムを行った。パネラーとして登壇したのは、地元・栃木の大田原市で八木澤竹芸を営む竹芸家の八木澤正氏、静岡の南伊豆で高品質のタケノコを生産しているガイアシステム(株)社長の山本剛氏、高知にしか生育しない「虎斑竹(とらふだけ)」を取り扱う(株)山岸竹材店の4代目社長・山岸義浩氏、熊本を拠点に「竹あかり」の演出制作・プロデュースを国内外で展開している(株)ちかけんプロダクツ社長の三城賢士氏。各氏とも独自の手法で竹材の需要を広げていることを報告した中で、共通課題として浮かび上がったのは、伐出の担い手を含めた後継者の確保・育成問題。柴田氏は、「竹の使い方などを世代間でつなげていくことが必要」との方向性を示し、佐藤氏も「全竹連と連携して情報共有を進めたい」と意欲を述べた。

竹材の多様な利用方法について議論を深めた

2日目は、大会実行委員長の若山太郎氏が社長をつとめる(株)ワカヤマファームの「若竹の杜 若山農場」を視察し、竹林を観光資源として利活用する可能性などを学んだ。

(2023年11月17日取材)

『林政ニュース』編集部

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