群馬県北東部に位置する片品村(梅澤志洋村長)は、尾瀬国立公園や日光国立公園の一角を占め、多くの登山者や観光客が訪れる“尾瀬の郷”として知られる。
同村の人口は約3,700人。総面積は約3万9,100haで、その92%を森林が占める。森林のほぼ4分の1にあたる約8,900haは国有林で、残りの民有林の大半は大山主の企業数者が奥山を所有し、集落周辺の約3,700haに小規模所有者が集中するなど特殊な所有形態となっているが、村民の高齢化や不在村化による森林整備の遅れは共通課題になっている。この課題を解決するため、同村では新たな取り組みがスタートした。
同村は6月12日、改正森林経営管理法に基づく「森林経営管理支援法人」に、フォレスターズ(株)(岐阜県郡上市、小森胤樹社長)を指定した*1。
村役場で同社との共同記者会見に臨んだ梅澤村長は、フォレスターズをパートナーに選んだ理由について、「2024年度から地域林政アドバイザーや片品村森林ビジョンの策定、森林ゾーニング検討会など、村の根幹事業に携わってもらってきた経緯がある」と述べた。これに応じて、フォレスターズの小森社長は、「全国各地で森林ビジョンが策定されているが、実行・管理の体制も伴って初めて意味を持つ。地域に密着して支援していきたい」と意気込みをみせた。
所有者を直接訪ねて意向を調査、支店を新設し専属フォレスター配置
フォレスターズが片品村から委託されて取り組む主な業務は、①林務行政支援と、②森林ビジョン・森林ゾーニングの策定。必要経費の財源には森林環境譲与税を充てる。
①林務行政支援では、森林所有者を対象にする意向調査のやり方を見直す。これまでは郵送によるアンケート調査を行ってきたが、今後は所有者を直接訪ねて、現地調査・測量を行いながら森林経営の意向を把握するようにする。同村は地籍調査が完了しておらず、GIS等を用いた地籍調査も並行して進めていく予定としている。
これに加えて、2021~2022年度に境界明確化を実施した約25haを対象に、改正森林経営管理法で可能になった集約化スキームを適用し、森林整備を進めていく計画だ。
②森林ビジョンの策定にあたっては、東京パワーテクノロジー(株)(東京都江東区、本橋準社長)の尾瀬林業事業所など村内の大山主の管理会社も参画し、コンサルタントの(株)古川ちいきの総合研究所(大阪府大阪市、古川大輔社長)が加わって、“尾瀬の郷”らしいビジョンに仕上げ、今冬にも公開する予定だ。

森林ビジョンに関わる施策として、森林ゾーニングの策定作業も進めており、同村の地形・地質などをベースに木材生産適地や環境保全林などを明確にして、最適な施業を行うことにしている。
同社は、「森林経営管理支援法人」の指定を受けるにあたり、専属のフォレスターを配置し、支店登記も行った。新設した片品村支店のトップに任命されたのは、黒沢秀基氏。

黒沢支店長は、東京農業大学で主に森林生態学を学び、卒業して尾瀬林業(株)(現・東京パワーテクノロジー)で約10年間勤務し、環境省の片品自然保護官事務所で約3年間働いた後、昨年(2025年)にフォレスターズへ転職した。高校生の頃から同村で活動しており、村民とも距離が近い。樹木医の資格も有しており、植物・昆虫の同定はお手の物で、“生き物博士”の異名を持つ。その黒沢支店長は、「村の森林がより魅力的になるように尽くしていきたい」と抱負を口にした。
譲与税の使途を現場目線で見直し、コラボレーションを活かす
片品村には、2024年度に約3,000万円の森林環境譲与税が交付された。2019年度からの交付額は図のように推移しており、これまでの累計額は約1億1,600万円、活用率は56%となっている。

同村では、譲与税を林地台帳の整備、意向調査、危険木伐採、安全用具の購入補助などに活用している。当初は航空レーザー計測による森林資源量調査を行うために基金を積み立てていたが、2019年度以前に取得済みのデータが複数回分あることから、村単独での再計測は見送ることにした。森林資源の成長量は、過去に取得したデータから推測する手法の開発や、UAV(ドローン)によるスポット調査で補うことにし、浮いた財源を森林ビジョンの策定・実行や林政アドバイザーの雇用などの費用に充てている。今後も必要に応じてメニューを拡充することにしている。

同村の林務担当者である鎗水秀虎・農林建設課主査は、林野庁からの出向者で昨年度から現職に就いた。九州出身の鎗水主査は、「市町村が求めている専門性を補える仕組みを活用していきたい」と話しており、これからフォレスターズとのコラボレーションによる新たな取り組みが膨らんでいきそうだ。
(2026年6月12日取材)
(トップ画像=「森林経営管理支援法人」への指定書を手にする(右から)片品村の梅澤志洋村長とフォレスターズの小森胤樹社長及び黒沢秀基片品村支店長)
『林政ニュース』編集部
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