【譲与税を追う】兵庫県姫路市

兵庫県 税制

【譲与税を追う】兵庫県姫路市

「白鷺城」のお膝元で「ふるさと百年の森構想」の実現目指す

「白鷺城」の愛称で親しまれ、「お城人気ランキング」でトップを走り続ける姫路城。400年以上の歴史を持ち、「木造建築の傑作」とも評される。この「白鷺城」のお膝元である兵庫県姫路市は、2006(平成18)年に1市4町が合併して誕生した。

同市の人口は約52万人。総土地面積は5万3,435haで、このうち森林面積は3万543ha。都市(旧姫路市)と山村(旧家島町、旧夢前町、旧香寺町、旧安富町)が共存する同市に、2022(令和4)年度は9,672万円の森林環境譲与税が交付された。これまでの支出状況はのとおり。森林調査・境界確定などの基盤整備や森林づくり、普及啓発などに幅広く利用しており、基金への積み立ては少ない。

同市の農林水産部林産振興課には、1名の管理職員(土木職)と、林学出身の専門職員が6名在籍している。譲与税の支出方針について、同課の大東聡係長に尋ねると、「2012(平成24)年に策定した『姫路市ふるさと百年の森構想』の実現と、市民からの要望に応えることを中心に活用している」との答えが返ってきた。

国庫補助が届かない事業を支援、危険木の事前伐採で不安解消

姫路市における譲与税の主たる使途は、①奥地などの森林整備の支援、②集落周辺の森林整備、③航空レーザ計測による森林資源の調査・解析──の3つ。

①奥地などの森林整備の支援では、国庫補助の対象外となっている事業や事業費の嵩上げに譲与税を活用している。具体的には、奥地の林業経営に適さない人工林の間伐を進めており、2022年度までに118.6haの間伐を実施した。また、同市が推進している木製の簡易構造物を取り入れた「壊れにくい作業道」の整備に対して助成している。

②集落周辺の森林整備には、市民からの根強い要望があるという。豪雨や暴風などで倒木等の発生が懸念される裏山を対象に、危険木の事前伐採や間伐を行っている。自治会単位で基本計画を作成し、林内作業は森林組合等が担うかたちで進めており、22年度までに4地区、11.99haを調査し、うち2地区を整備した。大東係長は、「(事前伐採などで)市民の不安が解消でき、譲与税のPRにもなる。今後も継続していきたい」と手応えを口にする。

③航空レーザ計測による森林資源の調査・解析は、同市北部の林業地帯で行っており、昨年度(2023(令和5)年度)までに一通りの計測を終えた。大東係長は、「使える森林がどれだけあるかが把握できた。これから森林経営管理制度などを活用し、民間とも連携しながら循環型の林業経営を実現していく」と前を見据えている。

姫路市役所は「白鷺城」から姫路駅を挟んで徒歩約40分のところにある

(トップ画像=国宝・重要文化財に指定されている「白鷺城」は1993年に国内で初めて世界文化遺産に認定された)

『林政ニュース』編集部

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