南は大阪湾、北は六甲山地に囲まれる神戸市(久元喜造市長)は、約150万人もの人口を擁する。港湾関連産業や観光産業など港町・観光都市として発展してきた一方、市面積の約4割に当たる約2万2,000haは森林に覆われており、その9割(約1万9,000ha)は広葉樹林となっている。
同市は、この広葉樹林を“資源”として活かすべく、昨年(2024年)1月に元日本森林学会長の黒田慶子・神戸大学名誉教授を副市長のポストに迎え入れた*1。今年度(2025年度)からは「森の未来都市神戸」の取り組みをスタートさせ、黒田副市長をトップとする部局横断型の推進本部を設置し、森林課も新設した*2。
黒田副市長は、「森林環境譲与税などの公的資金だけでは森林整備のスピードが十分に上がらない。広葉樹林を活かして収益を上げ、持続的な森林管理を早期に実現する必要がある」と話しており、ニュータウン周辺や農村集落に隣接する比較的良質な広葉樹林から優先的に手入れし、家具用材などとして高値販売する仕組みの構築を目指している。すでに、コナラなどの広葉樹材を有効利用できる大手家具メーカーなどとの話し合いを進めており、立木段階で注文販売するBtoB事業を検討している。他方で、製材した広葉樹材のストックヤードを設置し、誰でも購入できるように販売経路を多角化する試みにも着手している。
また、同市産材のブランド化を進めるため「KOBE WOOD」のロゴマークを定め、今年度から家具や日用品などへのラベリングを始めている。

これらに加えて、公園緑地などにあるウバメガシが備長炭の原料に適していることがわかり、徳島県の事業者と連携して本格的に生産する計画も動き出した。黒田副市長は、「思ってもみなかった収益源だ」と期待を寄せており、「家具用材と備長炭を両輪として市内の広葉樹林を活かしていく」と意気込んでいる。
独自の「こうべ都市山再生事業」をはじめタイプ別の支援推進
典型的な都市型自治体でありながら全国に先駆けて広葉樹林の活用に取り組んでいる神戸市には、2024(令和6)年度に約1億8,500万円の森林環境譲与税額が交付された。約150万人が居住しているだけに配分額は多い。
譲与税の仕組みが動き出した2019(令和元)年度からの同市への交付額は図のように推移している。

この中で注目されるのは、同市の独自事業である「こうべ都市山再生事業」に重きを置いていることだ。同事業は、六甲山系や帝釈丹生山系などの都市近郊林を対象にした森林整備事業で、管理が不十分な人工林の整備や搬出路の開設・復旧、管理道兼ハイキング道の整備などを行っている。2024年度は必要経費として約3,800万円を充当した。
このほか、「里山整備支援事業」では、竹林・雑木林などの手入れや獣害対策に取り組む地元団体に活動費等を助成し、林地台帳や森林GISなどの整備・更新等も行っている。さらに、様々なプレイヤーが参画する「こうべ森と木のプラットフォーム」の運営費にも充当している。
都市部・農村部のタイプ別に支援メニューを用意し、広葉樹を活かしながら譲与税の利用促進を図っているのが同市の特徴といえる。
(2025年10月17日取材)
(トップ画像=神戸市産材を保管するストックヤード)
『林政ニュース』編集部
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