阿武隈山系の森林資源を有効活用し続けるアメリカ屋【企業探訪】

福島県 チップ 素材生産 造林・育林

福島県郡山市に(株)アメリカ屋(鈴木金一社長)という一風変わった名を冠する林業会社がある。東北地方でもなだらかな地形で知られる阿武隈山系の森林資源を60年以上にわたって有効活用し続けており、最新の高性能林業機械「スパイダー」を先駆的に導入して現場作業の改革にも乗り出している。

1960年に創業し広葉樹材の伐出で成長、転機にも耐え抜き地域を守る

アメリカ屋が産声を上げたのは、1960年のこと。現社長・鈴木金一氏の先代である鈴木晋作氏が福島県の中通り中部に位置する玉川村で「青木屋商店」を創業し、立木購入と素材生産、炭の生産販売を始めた。1962年には「アメリカ屋商店」へと商号を変更し、地元製紙会社へのパルプ材納入を開始。続いて、1967年に社名を「アメリカ屋」に改め、1989年に有限会社化、2000年に株式会社化して現在に至っている。

創業時の主力事業は、広葉樹材の伐出であり、シイタケ用原木とパルプ用材の供給で事業基盤を築いた。昭和50年代には年間約200haを伐採し、約2万m3の原木を供給したという記録が残っている。福島県内には複数の製紙工場があり、広葉樹チップのニーズが高かったことが同社の成長を後押しした。

鈴木金一・アメリカ屋社長

だが、転機は突然訪れた。1993年に三菱製紙(株)の白河工場が事業を停止し、閉鎖となった。同時期に中国産シイタケの輸入規制が緩和され、シイタケ用原木市場がダメージを受けた。一気に主力事業を失うような状況下で、先代から事業承継したばかりの鈴木社長は、「今だから言えるが、当時は事業断念も考えた。だが、守るべき社員や地域がある。なんとか踏みとどまってやってきた」と振り返る。

米軍払下げジープ改造から機械化推進、県内有数の事業規模を誇る

現在、アメリカ屋の事業は、素材生産、チップ材生産・放射能検査、原木・木質系産業廃棄物の輸送、特殊伐採、薪製造と大きく広がってきている。年間のチップ材取扱量は約15万m3、素材生産量は約6万m3、年商は約39億円、社員数は約65名に上る。

県内有数の事業規模を維持している背景には、同社を貫く「進取の精神」がある。創業者の鈴木晋作氏は、米軍の払い下げジープを購入し、運転席だけを残して荷台を原木運搬用に改造したエピソードの持ち主であり、1960年代後半には林道整備を推進して原木の低コスト搬出体制をいち早く整えた。1982年にはトラッククレーンのウインチを改造して、林道から原木を引き上げる作業システムを開発した。現場で望まれる機械があれば積極的に購入し、なければ自作するというスタンスを崩さず、作業データも緻密に収集・分析して事業の改善に役立てている。

そして今、力点を置いているのがスイス製の4輪多関節型作業機械「スパイダー」を使った新たな作業システムの確立だ。スパイダーはタイヤが付いた4本の脚がそれぞれ独立して稼働することで最大傾斜45度の斜面でも走破できる。同社は、全国に先駆けて2019年にスパイダーを購入し、実用化を進めてきた。鈴木社長は、「山を傷つけずに作業をできるのが最大のメリット」と評価している。

同社は、林業機械化を進めながらソフト面の事業も強化している。すでに、森林経営計画の策定・山林調査などを行う(株)森林ガイド(郡山市)を設立しており、アウトドア施設の運営にも乗り出している。新規事業は、鈴木社長の息子である鈴木優作・専務取締役がプロデュースしており、森林内でフィンランド式サウナやキャンプを楽しめるサービスにも着手している。 今後に向けて鈴木社長は、「先代らが育ててきた阿武隈山系の森林を次世代に引き継ぐ見通しがついてきた」と目線を上げている。

(2026年3月25日)

(トップ画像=昨年(2025年)12月2日に福島県内の国有林でデモンストレーションをした「スパイダー」)

『林政ニュース』編集部

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