北山杉の産地である京都市北部の京北地域(旧京北町)で国産漆の復活と伝統工芸の再生を目指す取り組みが本格化している。一般社団法人パースペクティブ(京都市中京区)が市有林を使って漆林の造成を進めているほか、木工芸をはじめとしたモノづくりの拠点を整備する計画も具体化してきている。
パースペクティブが「京北ファブビレッジ」の整備を目指す
パースペクティブは、漆精製業を営む堤浅吉漆店の専務取締役・堤卓也氏(43歳)と工藝文化コーディネーターの松山幸子氏(44歳)が2019年6月に設立。地域資源を活用した循環型社会の形成を事業目的に掲げており、同年9月には世界的サーフボード・シェイパーであるトム・ウェグナー氏を招いて、桐と漆を使ったサーフボードづくりのワークショップを行ったほか、漆文化発祥の地といわれる奈良県曽爾村で地域振興のコンサルタント事業を開始した。
昨年は、2月に京都市が保有する「合併記念の森」(約268ha)の一部(1.6ha)のエリアを活用していく協定を締結し、4月と11月に計約80本の漆の苗木を植え付けた。周囲に自生している桐の育成にも取り組んでいる。9月には大阪大学エスノグラフィー・ラボ及び京都工芸繊維大学サステナビリティデザイン研究室とマテリアルフローに関する共同研究を開始。10月にはモノづくりの拠点として「京北ファブビレッジ」を整備する計画がトヨタ財団の国内助成プログラムに採択された。今年に入ってからも、「漆の森」の造成資金をクラウドファンディングによって約200万円調達するなど活発な活動を続けている。
来年度(2021年度)も漆苗木の植樹を年2回のペースで継続していくほか、「京北ファブビレッジ」の候補地選定などを進めていく予定。同ビレッジでは、デジタルからアナログまで対応可能な各種工作機械が揃う市民工房「ファブラボ」を整備し、世界各地の「ファブラボ」とネットワーク化することが構想されている。
松山幸子・パースペクティブ共同代表の話「漆林の造成にあたっては、量を追求するよりも、森と人との距離を縮め、コミュニティとして森を育てていくことを重視している。10年~15年後に漆の樹液が採取できるようになったときに仕事があるように、“出口”を見据えて取り組んでいきたい」
(2021年2月10日取材)
(トップ画像=地域住民とともに漆苗木を植樹)
『林政ニュース』編集部
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