約80種の国産板材がある「re-ISE」、ニッチ需要に対応
“木の図書館”の通称は、「re-ISE(リイセ)」。奥伊勢から新たな木の文化を発信する意味が込められている。同館の特長は、80を超える国産樹種を実際に手にとって選べること。工場の一角に設けられた館内には、樹種名やサイズが明記された板材が用途別に整理された棚に並んでいる。来館者は、図書館でお気に入りの1冊を選ぶように、一点物の材料を見つけ出すことができる。
「re-ISE」を運営している武田製材の武田誠社長は、「多種多様な板材の中からこだわりのものに出会える。ワクワクするような体験をしてもらいたい」と語る。
同社が取り扱っている迷木は、業界のプロでも扱いに困るような特殊な丸太を指す。果樹材や街路樹なども含め、現在の取り扱い樹種数は150以上に及び、小径木や曲がり材、4m材などサイズも多岐にわたる。これらを板材に加工して、逐次、品揃えを充実させている。
来館者で多いのは、木製のボールペンや結婚証明書の作家など。とくに、木製結婚証明書では、樹種が持つ花言葉が重視される。「ただひとりを愛する」や「一途」という意味を持つヤマモモは人気が高いという。

このほか、大工職人からは鉋台用材となるヒイラギ、また、軍配の柄やお箸に使うヌルデが求められるなど、専門的でニッチな需要に幅広く対応している。
SNSを活用して直販システムを構築、木材ツーリズムも構想
武田製材は、梱包材メーカーとして昭和初期に産声をあげ、1961(昭和36)年に法人化した。迷木事業は武田社長が15年ほど前に開始した。5年前は迷木と梱包材の売上比率が5対5だったが、現在は8対2にまで迷木事業が拡大している。


同社の成長を支えているのがデジタル技術だ。3年ほど前から武田社長の子息が画像共有SNS「Instagram」の運用を本格化し、各種板材の画像を樹種名・サイズ・特長・価格とともに投稿してきた。今では、購入希望者とメッセージをやり取りして販売する直販システムが構築されている。


武田社長は、「re-ISE」の展示内容をさらに充実させながら、都市部の木材業者と連携して販路を拡大する方針をとっている。今後に向けて、「全国に『木の図書館』を増やし、木材ツーリズムを確立する」ことも構想している。
(2025年8月20日取材)
(トップ画像=「re-ISE」の館内には多種多様な板材がある)
『林政ニュース』編集部
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