7.3.4. 地域の森林・木材資源と関係業者のネットワーク化に取り組む物林【健全で持続可能な原木・製品輸送の発展に向けて】

関東地方 東京都 研究 統計・調査

1967年に発足した三井物産林業株式会社を前身とする物林株式会社は、木材商社としての長年にわたる事業実績を踏まえて、全国レベルの大規模な製材工場だけでなく、各地域を支えている中小零細規模の製材工場等にも適時適切な原木供給をすることを目指している 。「物流の2024年問題」を契機として、原木及び木材製品の輸送の効率化とコスト削減が迫られる中で、積極的に需要創出に取り組んで地域材の価値を高め、サププライチェーンが整備と強化を図ることにしている。

事業者名物林株式会社
代表者名淡中克巳・代表取締役社長
所在地東京都江東区新木場1丁目7-22
創業年1967年
業種・アンケート種類素材生産業・(NO.1)
輸送主体委託
年間原木取扱量115,700 m³
ヒアリング対応者淡中克巳・代表取締役社長

7.3.4.1.     運送業者との連携や原木市売市場などへの支援を強化

製材工場などの大規模化が進み、原木の集荷圏が拡大する中で、地域の中小零細規模の製材工場等が従来どおりに原木を調達することが課題になってきている。

同社は、原木の伐採地から距離の近いところで新規需要を創出するなど市場開拓の取り組みを行わないと山元立木価格などの上昇は見込めないと考えており、その基盤となる林業技術者の確保・育成や、造林及び素材生産事業の機械化と生産性向上、地場の製材工場等の経営体質強化などを支援していく方針をとっている。その一環として原木及び木材製品の輸送の効率化とコスト削減も重点課題に位置づけており、地域の林業・木材産業の振興に取り組む中で、物流の改善や改革も進めていくことにしている。

同社は、「物流の2024年問題」によって、これまで先延ばしにしてき課題が明確化してきたと受け止めており、特に、運送業者との連携強化や原木市売市場などへの支援を最優先のテーマに位置づけている。

同社は、約20社の運送業者と契約しており、伐採地の運送業者とは長年にわたる取引関係がある。ただし、新規の伐採地では、運送業者の確保が難しいこともある。運送業者をとりまとめる組合や協会がないので、地元の情報を集めて信頼の置ける運送業者を探している。特に原木の輸送にあたっては、樹皮や汚れの処理、トレーラーへの積載方法などに留意するようにしている。

7.3.4.2.     白鷹町・デロイトトーマツグループと連携しサププライチェーン整備

同社は、2023年4月11日に山形県の白鷹町及びデロイトトーマツグループと連携協定を締結し、「林業再生による地域活性化に取り組む白鷹町プロジェクト」を推進している。

「白鷹町プロジェクト」では、地域に根ざした木材加工体制を整備し、山元への利益還元を増やしながら新規需要の開拓に取り組むことにしている。その中では、原木の集出荷拠点となる中間配送センターを整備することなどが構想されており、同社も「木と緑のプロ集団」として関わっていくことにしている。中間配送センターでは、自動選別機を導入し、24時間での受け入れ体制をつくり、トラックやトレーラーの待ち時間をなくして、輸送の効率化などを図ることにしている。

同社は、中間配送センターが中心となって地域材のサププライチェーンが整備されていけば、山土場における原木価格を2~3割引き上げることが可能になるとみており、「白鷹町プロジェクト」を森林・木材資源を循環利用するモデルにすべく取り組んでいる。

図7-3-4-1 協定書を手にする(左から)淡中克己・物林社長、佐藤誠七・白鷹町長、岩村篤・デロイトトーマツリスクアドバイザリー社長(2023年4月11日、画像提供:物林)

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(株)日本林業調査会

1954年創業。「林政ニュース」の編集・運営・発行をはじめ、森と木と人にかかわる専門書籍の発刊を行っている。

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