7.2.4. 同業他社と北関東製材協議会を組織して共同出荷を進める二宮木材【健全で持続可能な原木・製品輸送の発展に向けて】

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栃木県那須塩原市に拠点を構える二宮木材株式会社は、北関東を代表する製材メーカーであり年間の原木消費量は約10万m³に達する 。同社が生産している木材製品は品質の高さで定評があり、特にスギの平角は同社の代名詞と言える製品になっている。同社は、ムク(無垢)製材品の供給力を高めて販路を広げるため、同業他社と連携して北関東製材協議会を設立し、共同出荷によって様々なニーズに応えられる物流システムを構築している。

事業者名二宮木材株式会社
代表者名二ノ宮 次郎・代表取締役
所在地栃木県那須塩原市四区町741-5
創業年1947年
業種・アンケート種類製品製造事業者(NO.2)
年間原木消費量100,000m³
輸送主体自社及び委託
輸送手段トラック
保有トラック台数10tトラック2台、ローダークレーン車(ヒアブトラック)2台、トレーラーヒアブ車1台
ヒアリング対応者二ノ宮泰爾・取締役専務

7.2.4.1.     7つの製材ラインを駆使し、良材から高品質のムク製品を生産

同社は、本社工場と、本社工場から5㎞圏内に第2工場を有する。2つの工場の間に中間土場を設けており、本社工場には原木は置かず工場敷地内に生産した製品を保管・管理している。

同社は、主にスギを原料にしてムクの細い製品から太い製品まで、具体的には、柱、羽柄、内装、造材などの幅広い品目を生産している。これを可能にしているのが7つの製材ラインである。昭和の製材機(シングル帯鋸)、平成の製材機(ツインバンドソー)、令和の製材機(ノーマンツインバンドソー)が稼働しており、量産機では挽けない製品もカバーしている。昭和の製材機であるシングル帯鋸では、柾目の製材を行っており、現在は窓枠サッシ向けの製品をつくって高付加価値化を図っている。本社工場には、選木機も設置しており、各製材ラインに適した原木の選別を行い、生産した製品には自社等級を設けている。

同社は、豊富なムク製品の在庫を持っており、プレーナー掛けのタイミングなどを考慮した管理を行っている。使用している原木は、八溝山系などから産出された枝打ちなどの手入れがされた良材が多く、JASの機械等級に基づいて節の少ないヤング係数70以上の高品質製品を供給している。特に、スギの平角については、他社の追随を許さない種類の在庫を保有している。

7.2.4.2.     アッセンブリなどを工夫し、30~40㎞圏内は1週間程度で納品

同社は、高品質のムク製品を輸送にあたって、アッセンブリ(複数のものを集めて1つにまとめる)と効率性に留意するに努めている。特に8寸下平角の場合は材積が2㎥以下に止まるので、合積みで輸送するようにしており、基本的に首都圏には1週間程度で納品している。それよりも距離がある場合は2週間程度を要することを取引先に伝えて安定供給を図っており、大手ハウスメーカーとの取引も続いている。

同社は、「物流の2024年問題」に関わって運送業者から値上げの要請がある前に価格改定の提案を行い、信頼関係を築いている。定期的に取引を行っている運送業者は、栃木県2社、東北1社、東海1社、関東1社である。製品出荷の2週間くらい前に運送業者の手配を行い、荷積みや荷下ろしの時間が重ならないように配慮している。トラックドライバーも所属にとらわれずに連絡をとりあって待機時間を減らすようにしている。

原木の輸送については、原木市売市場で購入したものは自社のトラックで行い、素材生産業者は自己所有のトラック等で直接持ち込んでくる。木材製品の配送計画は取締役専務の二ノ宮泰爾氏が担い、原木の配送計画は代表取締役の二ノ宮次郎氏が担当し、業務分担を行うことで情報の集約や共有に伴う混乱を避けるようにしている。

7.2.4.3.     栃木・茨城両県の若手が結集し、多様な製品の供給力を高める

北関東製材協議会は、同社が呼びかけて2024年4月27日に、「会員である製材会社が共同受注体制を整え、新たな商流、市場への対応で連携」することを目的として発足した(同協議会のウェブサイトより)[i]。会員は、二宮木材株式会社(栃木県)、株式会社野上製材所(茨城県)、株式会社栃毛木材工業(栃木県)、有限会社宮製材所(栃木県)、株式会社渡辺製材所(栃木県)、有限会社マルハチ(栃木県)、有限会社森嶋林業(茨城県)、株式会社ヤギサワ(栃木県)、株式会社鉾田製材所(茨城県)、有限会社皆川製材所(茨城県)、丸川木材株式会社(茨城県)、有限会社大塚林業(栃木県)の計12社とカントーコーポレーション株式会社(千葉県)で、会長は二ノ宮泰爾氏がつとめている。同協議会には、栃木県及び茨城県の製材工場の若手代表者が結集しており、会員企業の中には、八溝多賀乾燥共同組合(共同乾燥、JAS測定)に参加し、生産を行っている企業もある。

図7-2-4-1 北関東製材協議会の設立時の様子(画像提供:二宮木材株式会社)

同協議会では、同社が注文を受け、他の製材工場と協力して出荷する体制をとっている。受発注のメールなどすべて情報を会員間で共有しており、取引において同社が手数料をとるような仕組みはとっていない。配送の手配も同社が担っており、製品出荷にあたっては他社との合積みなどを行っている。共同出荷によって1社では量的な確保が難しい注文でも取引を成立させることができている。また、会員企業は、ヒノキや銘木など様々な専門分野を持っており、幅広いラインナップへの対応も可能になっている。同協議会のウェブサイトでは、小径木、柱、羽柄、平角、内装、造作、JAS機械等級製材などが紹介されている。取引先にとっては、1社購買のリスクを回避できる利点がある。

同協議会が共同出荷体制を構築したことにとって、ムク製品の新たな市場が広がる可能性が出てきている。

図7-2-4-2 製品保管の様子
出典:那須塩原市で調査チームが撮影(2025年2月)
図7-2-4-3 製品や原木の輸送風景
出典:那須塩原市で調査チームが撮影(2025年2月)

[i] https://kita-kan.jp/overview/ (2025/03/17閲覧)『協議会概要』

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『林政ニュース』編集部

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