7.3.2. 年間約60万㎥の原木を安定供給しネットワークを広げる伊万里木材市場【健全で持続可能な原木・製品輸送の発展に向けて】

九州地方 佐賀県 研究 統計・調査

伊万里木材コンビナート(佐賀県伊万里市)内にある株式会社伊万里木材市場は、九州の各地に事業拠点を有し、原木の調達・販売をはじめ、森林整備や素材生産、木材製品の販売、プレカット加工、バイオマス発電燃料用チップの調達・販売、原木の輸出など多岐にわたる事業を展開している 。「物流の2024年問題」についてもいち早く対応を進めており、ドライバーの処遇改善につながるような輸送委託費の見直しなどを行ってきている。

事業者名株式会社伊万里木材市場
代表者名伊東貴樹
所在地佐賀県伊万里市山代町楠久津145番地
創業年1960年
業種・アンケート種類原木市売市場(NO.3)
年間原木取扱量600,000 m³
輸送主体委託
輸送手段トラック、トレーラー、船舶
ヒアリング対応者金丸勝彦・取締役製品建設部部長

7.3.2.1.     伐採後の植林・保育を引き受け、木材価格の平準化に努める

同社の年間原木取扱量は、2022年、2023年と2年連続で60万m³を上回って過去最高を記録し、全国屈指の事業規模を誇っている。

図7-3-2-1 伊万里木材市場の全景(画像提供:伊万里木材市場)
図7-3-2-2 伊万里木材市場の原木取扱量の推移
出典:https://www.imarimokuzai.co.jp/top/profile/ (2025/03/17閲覧)『会社概要』

大量の原木を安定的に調達するため、立木の購入時に森林所有者と協定を結び、伐採から植林、下草刈りなどに関する作業を5年間引き受け、健全に育てた森林を所有者へ戻す取り組みを続けている。

また、原木や木材製品価格が高騰したウッドショックのときでも一定の価格水準を保つことを基本とし、九州の原木価格(m³あたり)がヒノキで4万円、スギで3万円程度まで上昇しても追随せず、ヒノキは2万5,000~6,000円、スギは1万6,000~7,000円程度にとどめ、原木の販売先である製材工場や合板工場との信頼関係を深めた。こうした取り組みにより、大量の原木を安定的に供給することが可能になっている。

図7-3-2-3 広大な土場に次々と原木が運び込まれてくる(画像提供:伊万里木材市場)

7.3.2.2.     ドライバー目線で待ち時間を削減、モーダルシフトも進める

同社の土場(原木置き場)は一般道と接しており、原木を積んだトラックやトレーラーがスムーズに荷下ろしできないと渋滞の原因となってしまう。そこで、事前に配車計画などの調整を進め、隣接する西九州木材事業協同組合の用地も利用するなどして、荷下ろしに伴う待ち時間を極力なくすよう努めている。

また、土場の入り口には、専任の案内人が常駐しており、ドライバーが土場内のどこに原木を下せばいいかを迅速かつ的確に伝えるようにしている。

図7-3-2-4 専任の案内人の待機所(画像提供:伊万里木材市場)

陸送だけに頼らないモーダルシフトにも取り組んでおり、愛媛県西条市の株式会社サイプレス・スナダヤには船舶を利用して原木を定期的に届けている。

「物流の2024年問題」への対応を進めている同社は、山元還元のさらなる拡大を目指し、効率的な物流ネットワークを拡大することを検討している。そのためには、自社および関連会社の経営資源だけではなく、同業他社との連携・協業の拡大・深化を積極的に推進していく方針である。 同社は、九州地域にとどまらず、全国、さらには世界市場を視野に入れた事業展開を計画しており、国産材の供給力強化を戦略的課題に位置づけている。

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(株)日本林業調査会

1954年創業。「林政ニュース」の編集・運営・発行をはじめ、森と木と人にかかわる専門書籍の発刊を行っている。

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