労災ゼロに向け安全装備・装置メーカーが集結し初の意見交換会を開く【緑風対談】

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林業の現場で働く人々が身に着ける防護服やヘルメットなどのメーカーが一堂に会し、安全な装備のあり方などを考える場が初めて設けられました。そこで交わされた意見の要点を「緑」と「風」がお伝えします。

3か年で5,700点の導入助成、使用者アンケートも行う

日本林業が抱える最大の課題は、言うまでもなく労働災害の防止だ。他産業に比べて、災害の発生率が極めて高い。このため新しい「森林・林業基本計画」では、災害の発生度合いを示す「死傷年千人率」を10年後に半減させる目標を打ち出している。

林業現場の安全性をいかに向上させるか、全国の関係者が“決定打”を探し求めている中で、従来にない切り口の会合が7月22日に東京都内で開かれた。それは、林野庁が行った「安全衛生装備・装置メーカーとの意見交換会」。現場で働く人々が身に着ける防護服やヘルメットなどのメーカーが集まり、使用者からの要望や注文を踏まえて改良点などを考える場が初めて設定された。なかなか興味深い内容だったので、エッセンスをお伝えしよう。

「意見交換会」は、2019年度から行っている「林業労働力強化対策事業」の一環として企画された。同事業は、(株)森林環境リアライズ(北海道札幌市)が実施主体となり、安全衛生装備・装置の導入と研修事業にセットで取り組む事業体等に対して経費助成を行っている(補助率2分の1)。2019年度からの3か年で、空調服や防護ズボン、防護衣、防護ブーツ、ヘルメットなど5,700点の安全衛生装備・装置が同事業によって現場にもたらされた。その際、使用者アンケートも行って現場の声を吸い上げている。こういう本音ベースの調査資料というのは得難いものだ。

競合メーカーも同じテーブルにつき、製品への注文を聞く

「意見交換会」では、2020年度に行ったアンケート調査の結果が報告された。これを受け止めた出席メーカーは14社(参照)。競合製品を取り扱うメーカーも同じテーブルにつき、自社や他社の製品の評判を聞くという一風変わった会合となった。

では、アンケート調査結果のポイントを紹介しよう。製品ごとに改良が望まれる点として、ざっと次のような指摘があった。
【空調服】バッテリーの使用時間が短い/ファンからチェーンソーのおが粉が入り込む/生地の耐久性に不安がある/背中部分にもベンチレーションがついているといい/目立つ色合いのものが少ない
吸汗速乾インナー】腕の部分の締め付けがきつく、跡が残る
防護ズボン】夏場は暑い/少しゴツゴツする/より軽量化して欲しい
チャップス】止め具が多い/足の止めバンドがゆるくて長く、枝や機械のレバーに引っかかりやすい
防護衣】ごわつく/使用するうちに柔らかくなるとよい
ヘルメット】あごひもの取り付けに苦労する/後ろのロックをすると頭が締め付けられ痛い/価格が高いものは個人負担がきつい
防護ブーツ】カットが高いので着脱が面倒/くるぶし部分がもう少し曲がりやすくてもいい/スパイク付きがあるといい
【Bluetooth内蔵型イヤマフ無線機】山で使うには電波が弱い/価格が高い/4台同時に使用すると1台は雑音が激しい

ここに紹介したのは、使用者から寄せられた声の一部であり、ランダムな内容となっているが、現場目線で見るとまだまだ改良の余地が多いことがわかる。

海外メーカー製に「一日の長」、異業種からの参入組も健闘

アンケート調査結果からは、国内メーカーと海外メーカーの製品に関する全般的な評価の違いも浮かび上がった。
例えば、防護ズボン。国内メーカー製には、「思っていたより軽量だが、屈伸しづらい」、「ファスナーが弱い」、「耐久性をよくして欲しい」などの要望があった。一方、海外メーカー製には、「履き心地がいい」、「色合いがよくカッコイイ」など高評価が目立った。

ヘルメットに関しても、国内メーカー製には軽量化や装着性の向上、デザインバリエーションの多様化などを求める意見が多かったのに対し、海外メーカー製は、「フィット感がよい」、「イヤマフをすると夜の耳鳴りがなくなった」という使用者ならではの感想が出ていた。

総じて海外メーカー製は、機能面で一日の長があるといえるが、「価格が高い」という声のほか、「袖がちょっと長い」、「裾が余る」、「試着しないとサイズ感がわからない」という注文もあった。日本人の体形などに合わせるには、もう一工夫が必要なようだ。

国内メーカーも製品の改良などを鋭意進めており、海外メーカーと切磋琢磨していけば全体のレベルアップにつながる。
興味深いのは、国内の異業種から参入したメーカーが健闘していること。登山用品などアウトドア総合メーカーとして知られるモンベル(大阪府大阪市)の防護ズボンは、安価かつ軽量で伸縮性も高いなど評判がいい。また、空調服のエヌ・エス・ピー(岐阜県中津川市)は、建設・土木分野で培ってきたノウハウを製品開発に活かしていく方針だ。通信機器メーカーも最新のICT(情報通信技術)を応用して林内の作業環境を改善しようとアイディアを競っている。
今後も「意見交換会」のような場が増えて、ユーザーとメーカーの“距離”が縮まっていけば、製品の開発・改良スピードが一段と上がっていくだろう。そのことを期待したい。

(2022年7月22日取材)

(トップ画像=「意見交換会」は東京都千代田区の農林水産省三番町共用会議所で行った)

詠み人知らず

どこの誰かは知らないけれど…聞けないことまで聞いてくる。一体あんたら何者か? いいえ、名乗るほどの者じゃあございません。どうか探さないでおくんなさい。

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