「日本一の木材運送」を目指しフルトレーラーなどで効率輸送
卓洋グループのウェブサイトを訪れると、「日本一の木材運送を目指す」との言葉が飛び込んでくる。グループ全体で約60台のトラックやトレーラーなどを保有し、原木輸送の経験豊富なドライバーが多数在籍している。この陣容と、林業県・宮崎という恵まれた立地条件を踏まえれば、「日本一」は十分に射程圏内にある。
約30万m3という原木輸送量は、宮崎県の年間素材生産量の約7分の1に相当する。同グループのトラック等は月に20~22日程度稼働しており、1人1日当たりの平均輸送量は120m3以上にも達する。一体、どうやったらこれほど輸送体制を組めるのか?

大量輸送の中核になっているのがフルトレーラーだ。10tトラック1台の積載量は約10m3であるのに対し、フルトレーラー1台では約30m3と3倍近い差がある。1台当たりの積載量が増えれば、輸送効率や費用対効果が高まる。同グループでは、フルトレーラーを1日に最低4回転、多いときは6回転のペースで運行している。
各ドライバーは、運転だけでなく、積み込み・荷降ろしの技術も高い。営業担当の川原拓二氏によると、「1台30~40分くらいで終わる」というから驚きだ。
「安全への配慮」を最優先、デジタル化を進めて運行を最適化
原木を大量輸送している卓洋グループは、「安全への配慮」を最優先課題に据えている。過積載対策をはじめ法令遵守を徹底するとともに、社長や役員総出で1日1時間、場内の隅々まで清掃を行い、破損した部品の早期発見などにつなげている。
配車計画では、「無理なスケジュールは組まない」(川原氏)ことを大原則にしており、各ドライバーとのコミュニケーションを深めて体調やコンディションの把握に努めている。
その上で、力を入れているのが「デジタル化」だ。車両運転時の速度や走行時間、走行距離などを記録するデジタルタコグラフ(デジタコ)は、県内の同業他社だけでなく、タクシー会社などよりも早く導入した。ドライブレコーダーに連動したデジタコを全車両に搭載し、川原氏が事務所から各車両の位置や走行状態を把握して、事故や故障、荷積みや荷下しのトラブルが発生しないようにきめ細かなサポートを行っている。

運転日報のデジタル化も進めており、どの現場でどれだけの原木を積んだのか、移動距離、作業時間などのデータを集約し、過去の輸送データも合わせて配車計画の最適化や労務管理の効率化につなげている。
原木輸送に関わる様々な情報が社内で共有化されることにより、ドライバー同士で異なる運行ルートの所要時間を比較し、より効率的なルートを選ぶことも可能になっている。
「林業の物流パイオニア(先駆者)」としてドライバーを育成
卓洋グループのルーツは、兒玉基治社長の実父が1989年に創業した児玉開発(有)だ。現社長の基治氏は、木脇産業グループに属する万ケ塚運送(株)の日向営業所長として10年間、原木輸送のノウハウを学んだ後、1999年に児玉開発を発展的に解消して卓洋運輸を独立開業した。
その兒玉社長が自身のモットーとして掲げているのは、「林業の物流パイオニア(先駆者)」になること。この志を遂げるべく、原木輸送を巡る様々な課題を先取りするかたちで、チャレンジを続けている。

ドライバーの育成・確保では、手厚い研修制度や資格所得支援制度を用意して、免許などを持っていなくても同社に入社できるようにしている。勤務体制も順次見直しており、かつては週6日勤務制をとっていたが、深夜労働時間の短縮化や第2・4土曜日の休日化などを経て、完全週休2日制に移行。平均残業時間は月40時間以内に抑え、月給は残業代込みで30万円からとしている。もちろん、全社員が雇用保険、労災保険、健康保険、厚生年金などに加入している。
同グループで働くイメージや就業環境などをウェブサイト等で発信することにより、県内だけでなく県外からもU・Iターン者を含めた若手ドライバーを採用できるようになっている。
このほか、グループ企業の卓洋は、車両の整備・修理だけでなく、グラップルの装着などの架装作業も行っており、他社の車両のメンテナンスなども引き受けて、収益性を高めている。

一般的にトラックの耐用年数は約15年と長いが、同グループでは、8年をメドに車両の入れ替えを行っており、併せてフルトレーラーの導入など大型化を進めている。
兒玉社長は、同グループのメッセージとして、「安心、安全で素早い木材運送は、日本の活性化に必要なもの」と訴えている。この言葉が宮崎から全国に届き始めている。
(2025年1月28日取材)

『林政ニュース』編集部
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