積極的な投資で森林系クレジットを生み出すステラーグリーン【企業探訪】

積極的な投資で森林系クレジットを生み出すステラーグリーン【企業探訪】

グローバルに事業を展開するソフトバンクのグループ企業である(株)ステラーグリーン(東京都中央区、中村彰徳社長)が森林系カーボンクレジット市場で存在感を高めている。7月31日に北海道の安平町(及川秀一郎町長)との間で「カーボンニュートラルの実現に向けた連携協定」を締結したのに続き、11月8日には北海道共和町(成田慎一町長)、さらに11月25日には北海道八雲町(岩村克詔町長)とも同様の協定を取り交わした。積極果敢な事業活動を支えているものは何なのか──。

初期費用なし、完全成果報酬型でクレジット販売まで手がける

ステラーグリーンが北海道内の3町と結んだ協定の内容は、森林の二酸化炭素(CO2)吸収量を国の認めるJ-クレジットにして企業等に販売し、脱炭素社会の実現や地域振興につなげるというもの。同様の取り組みは全国各地でみられるが、同社のウリは完全成果報酬型でクレジットの創出から販売まで手がけていることだ。

森林のCO2吸収量をクレジット化する際には、国が定めたルールに則って測定やモニタリングをする必要があり、手間も時間もお金もかかる。この負担を同社が丸ごと引き受けて、クレジットを販売した後に一定の手数料を取る。森林所有者等は、初期費用なしで、CO2吸収量をクレジット化でき、販売収入も得られる。ここまで踏み込んだサービスを行っている企業は、全国でも数えるほどしかない。

簡易算定ツールをリリース、「森林系のプラットフォーム目指す」

完全成果報酬型でクレジットの創出・販売を行って採算はとれるのか──この点をステラーグリーンの中村社長に問うと、「市場を創造し地域の発展につなげる。そのための投資は惜しまないですし、しっかりと収益を出す自信もある」との答えが返ってきた。

ソフトバンクグループは新たな需要を生み出すために先手を打って積極投資をする姿勢で発展してきた。同社は、同グループで行政向けサービスなどを展開するSBプレイヤーズ(株)(東京都中央区)の100%子会社として5月9日に発足した。SBプレイヤーズの子会社には、競輪・競馬サイトを運営するオッズ・パーク(株)やふるさと納税のポータルサイトを手がける(株)さとふるなどがある。これらも市場創造の中で、地域と事業がともに発展してきており、「グループの経験・体力と地域からの信頼は十分」と自信を隠さない。

サービスの加速化に向け、同社は10月18日に「J-クレジット概算収入簡易算定ツール」をリリースした。専用サイトで都道府県、市町村、面積などを選択し、クレジットの販売希望価格を入力すると、8年間のCO2吸収量と価格がわかる。同ツールによってクレジット売買の透明性を高め、事業拡大に弾みをつける方針だ。

中村彰徳・ステラーグリーン社長、趣味はバードウォッチング

中村社長は、早稲田大学を卒業後、ホテル事業の経営やゴルフ場の再生を経験し、昨年(2023年)SBプレイヤーズに入社し、同社の社長に抜擢された。

「カーボンクレジット市場では削減系の勢いが強いが、これからは森林など吸収系のニーズが高まってくる」と見込んでおり、「衛星データの活用などでクレジットの創出コストは引き下げられる」とも口にする。今後に向けては、「弊社のサービスを全国展開し、森林系カーボンクレジットの『さとふる』のようなプラットフォームをつくりたい」との展望を描いている。

(2024年10月7日取材)

(トップ画像=共和町の成田慎一町長(左)と協定書を掲げるステラーグリーンの中村彰徳社長)

『林政ニュース』編集部

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