初の“純木造”11階建て耐火建築物「Port Plus」が完成【木造新時代】

神奈川県 木造非住宅

神奈川県横浜市に“純木造”の地上11階建て耐火建築物が誕生した。(株)大林組(東京都港区、蓮輪賢治社長)の次世代研修施設「Port Plus」だ。地上部分の構造部材(柱・梁・床・壁)をすべて木材にした高層ビルは全国初。RC造(鉄筋コンクリート造)のビルにつきものだったコンクリート打設時の粉じんやほこり、騒音などはなくなり、各種部材を工場で事前に製造するプレファブ化によって施工時の省力化と工期の短縮化を図った。独自開発の技術や部材を駆使した先進的な木造ビルとなっている。

国内外の木材製品を使い調達先を公開、最新技術・部材を活用

「Port Plus」の高さは44m、延床面積は3502.87m2。使用木材量は1,990m3で、このうち構造材が1,675m3、内装材が315m3となっている。国内外で生産された様々な木材製品を適材適所で利用しており、調達先も公開している(参照)。

構造体には、木質耐火部材「オメガウッド」を採用。とくに1階柱には(株)シェルター(山形県山形市)から技術提供を得て開発した国内初の3時間耐火仕様の「オメガウッド」を用いている。

柱・梁を接合する“鍵”として開発したのが「剛接十字仕口ユニット」。GIR接合(接合ロッドと接着剤で木材を接合)と貫構造を組み合わせ、ドリフトピンで固定する。輸送効率を考慮し、1ユニットのサイズは縦横2.8mとした。

金物や接着剤の使用を控えたことで、解体もしやすい建築物となっている。

「剛接十字仕口ユニット」の見本

知を育むための多数の“仕掛け”、資材高騰でコスト差縮小

「Port Plus」のコンセプトは「これからの知を育む場」で、施設内には多数の“仕掛け”がある。研修スペースには、至るところに植物が設置されており、環境音や香り空調も使って“森林”を再現。研修用宿泊室の床や家具にはムク(無垢)材を使用し、壁や天井は左官仕上げにして、空間の快適性を高めている。

研修用宿泊室はムク材を基調としている

照明やブラインドなどは大型タッチパネルやタブレットで操作し、各種センサーで消費電力や睡眠の質などを“見える化”してエビデンスも集めている。施設や各部屋の入退室は顔認証システムで管理し、鍵は使わない。

「Port Plus」を設計した高山峻氏は、「木造が鉄骨造やRC造と並ぶような世界を実現したい」と言う。木造の建設コストは、鉄骨造やRC造と比べると約3割増しだったが、最近の資材価格の高騰で差が縮まってきており、「国内で調達できる材料には追い風となっている」との見方を示す。

建設業界も人手不足が深刻だ。高山氏は、「木造はプレファブ化によって竣工現場の負担を軽減でき、省力化の面でも大きなメリットがある。今後も高層木造建築物の可能性を追求していきたい」と話している。

(2022年5月20日取材)

(トップ画像=「Port Plus」の外観、1,990m3の木材を使うことで約1,652tの二酸化炭素(CO2)を固定できると試算されている)

『林政ニュース』編集部

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