全国各地に「デジタル林業戦略拠点」創設、予算要求に盛り込む

全国 予算・事業

今年度(2022年度)補正予算と来年度(2023年度)予算要求を睨んだ林政関係の重点事項が固まってきた。新たに「デジタル林業戦略拠点」(仮称)を設けて地域一体となったスマート林業化を推進するほか、森林・木材由来のJ-クレジットの活用や森林サービス産業の展開など新たな収益機会の創出にも取り組む。

政府は5月16日に経済財政諮問会議を開き、来年度予算編成の基軸となる「骨太の方針」の骨子を決めた。岸田政権が掲げる「新しい資本主義」の重点投資対象として「グリーン」や「デジタル」をあげたほか、公共事業が中心となる国土強靭化対策を進めることも明記した。

これに先立ち、自民党の農林関係合同会議は、5月12日に「確実なグリーン成長の実現に向けた森林・林業・木材産業政策の展開について」を決議、3月から林政対策委員会(谷公一委員長)を中心に重ねてきた検討の成果をまとめ、政府に実現を求めた。

林野庁は、自民党の決議内容も踏まえて予算要求等に関する検討作業を進めており、目玉として「デジタル林業戦略拠点」の創設を打ち出す方針だ。これまでもICT(情報通信技術)を活用した林業・木材産業のスマート化を進めてきたが、まだ個別分散的な取り組みとなっており、航空レーザ計測による資源調査は民有林の約4割で実施した段階にとどまっている。海外からの木材調達が不安視される中で、国産材の供給力強化が求められており、最新のデジタル技術をフル活用して基盤整備を加速化する。

「デジタル林業戦略拠点」は、県境にとらわれない広域的な規模で設定することが構想されている。拠点ごとに異分野の人材を含めた地域コンソーシアムを設置して、川上から川下の関係者が連携した効率的なサプライチェーンの構築やデジタル人材の育成などに取り組む。

このほかの予算関連重点事項としては、国産材製品の増産や外材製品からの転換支援、造林分野を中心とした担い手の育成・確保、エリートツリー等を活用した主伐・再造林の促進、J-クレジットの普及などを通じた森林・山村価値の創造などを打ち出す方向となっている。

森林由来「クレジット」の拡大へ、専門委員会で検討が進む

国のJ-クレジット制度運営委員会は、森林経営活動によって生み出される「クレジット」を拡大するための制度見直しに着手した。同委員会の中に森林小委員会を設置し、4月28日に第1回会合を開いて、本格的な検討作業を開始。現在は対象外となっている再造林による二酸化炭素(CO2)吸収量や伐採木材製品中の炭素固定量を算定(カウント)するための方法論について議論を進めている。6月にはパブリックコメント(国民からの意見募集)を行って、制度改正につなげることにしている。

(2022年4月28日・5月12日・16日取材)

『林政ニュース』編集部

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