当初の公共は0.4%増、非公共は7.2%増だが中身は…
林野関係の2023年度当初予算概算決定額は3,057億円で、前年度(2022年度)当初予算比では2.7%増加した。これに22年度補正予算で追加された1,162億円をプラスすると総額では4,218億円となる。この4,218億円という予算規模は、前年度(22年度当初+21年度補正)と同水準であり、とりあえず所要額は確保できたといえる。
なお、参考までに農林水産省全体の予算規模をみると、23年度当初は前年度比0.4%減の2兆2,683億円、22年度補正追加額は8,206億円で、総額では3兆889億円となっている。
もう少し解きほぐそう。23年度林野関係予算の内訳は、公共事業が対前年度比0.4%増の1,979億円、非公共事業が同7.2%増の1,077億円となっている。ともに前年度を上回る金額であり、とくに非公共事業は7.2%も伸びているので、関係者はガッツポーズでも決めているのではと取材してみると、全くそのようなことはない。というのも、非公共予算の増額をもたらしているのは、義務的経費である「国有林野事業の債務返済経費」が前年度より92億円も増えたことによるからだ。これまでの小欄でも解説してきたように、国有林の債務返済に関する経費は、非公共事業の義務的経費に計上してから債務返済特別会計に移す仕組みになっている。この部分の金額が増えても、新しい施策や事業に投じられる政策的経費が増えるわけではない。
そのとおり。23年度の林野非公共予算の中身について林野庁の担当課に聞くと、政策的経費については前年度より約14億円減っているという。非公共予算の表向きの伸び率は7.2%だが、実質的には減額という厳しい仕上がりになっているのだ。
公共2,634億円で目標達成も直近5年間では下から2番目
それでは、総計で4,218億円となった23年度当初+22年度補正予算について、さらに中身を噛み砕いていこう。
まず、主力である林野一般公共予算について。23年度当初予算では0.4%増の1,875億円を確保した。内訳は、治山事業が623億円、森林整備事業が1,252億円となっている。
林野公共の0.4%増は、金額でみると前年度より8億円増えただけ。微増といえるレベルだ。それでも当初予算を増額すること自体が難しい状況の中では、0.4%でも前年度を上回ったのは健闘したといえよう。ちなみに、他の農林水産公共事業をみると、農業農村整備は0.1%増、水産基盤整備は0.3%増にとどまっており、林野公共の伸び率が最も高くなっている。
周知のように、災害復旧費を除いた林野公共予算に関しては、当初と補正などを合わせて2,600億円を獲得することが目標となっている。今回は、23年度当初の1,875億円に22年度補正の695億円をプラスして、2,570億円を確保。この段階では2,600億円まで30億円足りなかったが、例年のパターンとして非公共事業の「路網の整備・機能強化対策」(64億円)も林野公共の予算にカウントするので、総計では2,634億円となり、5年連続で目標額を達成することができた。
参考までに、ここ5年間の林野公共予算の推移をみると、2019年度(当初+前年度補正)は2,646億円(うち当初は1,827億円)、20年度は2,624億円(同1,830億円)、21年度は2,887億円(同1,866億円)、22年度は2,698億円(同1,867億円)となっている。今回確保した2,634億円は、5年間では下から2番目の規模。公共予算の押し上げ要因である「防災・減災、国土強靭化のための5か年加速化対策」も3年目に入って少々息切れ感が出ており、これから6年連続で2,600億円を達成するためには、新たなテコ入れ策が必要になりそうだ。
激化・多様化する災害に備えて、治山事業をきめ細かく拡充
林野公共予算の重点事項についてもみておこう。まず、治山事業にスポットをあてる。昨年8月末の概算要求時に掲げたテーマは、激化し多様化する災害への対応力を高めること。この観点を踏まえ、より機動的に事業が実施できるように、「使い勝手が高まるような見直しを行った」(治山課)という。
例えば、緊急予防治山事業等に関しては、年度ごとの計画額に縛られず、事業期間全体の計画額で採択する事業メニューを創設する。現行の年度計画タイプに加えて、「全体計画タイプ」をつくり、初年度は調査・設計に注力した上で複数年度にわたって十分な工期を確保するなど、事業計画を柔軟に検討できるようにする。
また、切れ目のない治山対策によって復旧の加速化と効率化を図るため、災害関連緊急治山事業等の後続事業の前倒し実施を可能にする。
保安林整備系事業も再編し、「保安林総合改良事業」を創設して、人家や重要インフラ近接地で危険木の事前伐採などが行えるようにする。「小規模なニーズにもきめ細かく対応していく」(同)のが狙いだ。
このほか、地震や火山活動が活発化していることを受け、震度5弱以上の地震が発生、または火山噴火警戒レベルが2以上となった地域については、林地荒廃防止事業の対象にして、応急対策資材の配備・備蓄等が可能な事業を創設する。
さて、今回はここで紙幅が尽きた。続きの予算解説は、後編で行おう。
(2022年12月20日~23日取材)

詠み人知らず
どこの誰かは知らないけれど…聞けないことまで聞いてくる。一体あんたら何者か? いいえ、名乗るほどの者じゃあございません。どうか探さないでおくんなさい。