新たな体制で裾野の拡大を目指すFSCジャパン【認証ビジネス最前線】

新たな体制で裾野の拡大を目指すFSCジャパン【認証ビジネス最前線】

東京・新宿にある地域産材の魅力発信拠点「MOCTION(モクション)」(運営=東京都)にこの夏、“新顔”が登場した。国際的な森林認証制度を運営するFSC(本部=ドイツ)の日本支部・FSCジャパン(NPO法人日本森林管理協議会、代表=太田猛彦・東京大学名誉教授、東京都新宿区)が初めて出展したのだ。そこには、どのような狙いが込められていたのか──。

「MOCTION」にデビュー、製紙業界ではスタンダードに

「MOCTION」の展示では、FSCの概要や歴史を紹介するとともに、(株)イトーキ、(株)岩泉フォレストマーケティング、(株)キシル、(株)マルホン、登米町森林組合など12者が手がける木製家具や積み木などの認証製品を並べた。

現在、日本国内でFSC認証を取得している事業者は2,263。内訳は、森林を対象とするFM(Forest Management)認証が33、木材・紙製品の生産・加工・流通工程を対象とするCoC(Chain of Custody)認証が2,230となっている。大半を占めるCoC認証の87%は製紙関連事業者で、木材関連事業者は13%にとどまる。

河野絵美佳氏

製紙業界でCoC認証の取得が進んでいる理由について、FSCジャパンでマーケティング&広報マネージャーを担当している河野絵美佳氏(33歳)は、「これまでの普及活動の成果だ」とし、「主要な製紙メーカーがCoC認証を取得したことによって市場でスタンダードになった」と手応えを口にする。

大手製紙メーカーなどは、国境を超えたビジネスを行っており、株主やステークホルダー(取引先など)から環境対策の強化を求められることが多い。河野氏は、「(FSCの)本部からは木材を大量消費する日本で“需要側”としての役割が期待されていた。これを踏まえて、以前より関心を寄せていた製紙業界から先にアプローチした」と言い、「次は林業・木材産業界への普及活動に注力していきたい」との方針を示した。

新事務局長に西原智昭氏、足元を固めて停滞を打破し認証林拡大へ

FSCジャパンは、今年度(2024年度)から体制を一新している。2006年の発足時から事務局長をつとめてきた前澤英士氏が昨年(2023年)12月に退任し、4月1日付けで西原智昭氏(62歳)が新事務局長に就任した。

西原智昭氏(画像提供:FSCジャパン)

西原氏は、コンゴ共和国などアフリカの熱帯林をメインフィールドにして、約30年間研究活動を行ってきた。FSCの認証監査では、主に野生生物保全の観点からコメンテーターを担ってきた。

FSCジャパンは、西原氏の国際的なキャリアも活かしながら、もう一度足元を固めて「FSC」の認知度を高めることにしている。

国内のFM認証林は、速水林業(三重県尾鷲市)が2000年に取得した*1のを皮切りに33者が取得し、認証林面積は約42万6,520haまで広がってきた。だが、最近は取得ペースが鈍っている。このため、5月にはFM認証の更新を見送った森林所有者に理由を聞くセミナーを開くなど、踏み込んだ企画を進めている。

「MOCTION」の展示期間中には、8月17日と24日に子ども向け工作ワークショップを開催し、広く交流の輪を広げた。

「企業のガバナンスやコンプライアンスを強化する面でも『認証』へのニーズは確実に高まっている」と指摘する河野氏は、「FSCマークがあれば、消費者に信頼と安心を与えられるなどビジネスの面でもメリットがあることを丁寧に伝えていきたい」と話している。

(2024年8月1日取材)

(トップ画像=年8月1日から27日まで「MOCTION」でFSC認証製品を展示した)

『林政ニュース』編集部

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