観葉植物としてウバメガシの苗木を育てる「MODRINAE(戻り苗)」を展開している(株)ソマノベース(和歌山県田辺市、奥川季花・代表取締役)は、熊野古道を訪れる観光客や地域住民の協力を得てどんぐりを集める「三度(たびたび)」プロジェクトを11月5日に始めた。
熊野古道周辺のドライブインや道の駅など5か所に「どんぐり回収BOX」を設置し、観光客らにどんぐりを拾って入れてもう。BOXに集められたどんぐりは同社が回収し、地域の福祉事業者らと連携して仕分け作業を行い、「MODRINAE」用の苗木に育てる。同社の奥川季花社長は、「『MODRINAE』の受注が増えているので、どんぐり集めの“輪”を広げることにした。どんぐりを拾った人達が森林と関わるきっかけになればいい」と話している。
なお、同プロジェクトは、(株)日本能率協会マネジメントセンター(東京都中央区)が主催し、田辺市が協力する地域課題解決プログラム「ことこらぼ」の一環として行われている。
林業特化の企画制作が主業、企業向け「戻り苗」は40社導入
ソマノベースは、森林・林業に特化した企画制作を主業としている。旅行会社や大学などからの依頼に応じて、林業関連ツアーや教育プログラムなどを提供することが多い。奥川社長は、「森林や林業に関心はあるが、何から始めたらいいかわからないという企業などから相談が来ている。企画を考えるスタッフが足りないこともある」と言う。

企業からの注文に応えるため、6月から「MODRINAE for BUSINESS」を販売している。オフィスでウバメガシの苗木を1年かけて育成し、同社に返送すると田辺市内に植林される。主に都市部の展示会に出展して同商品をPRしており、これまで約40社が導入を決めた。奥川社長は、「まずは『MODRINAE』を試してもらい、5年くらいのスパンで植林ツアーなどに参加してもらいたい」と呼びかけている。

同社がミッションとして掲げているのは、森林・林業の活性化を通じて、「土砂災害による人的被害をゼロにする」こと。奥川社長は、「『MODRINAE』などが契機となって、土砂災害リスクを低減する森林の役割が評価され、お金が山元に還るような仕組みをつくっていければ」と期待を込めている。
(2022年11月5日取材)
(トップ画像=道の駅などに設置されたどんぐり回収BOX(地域材を使用))
『林政ニュース』編集部
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