国産広葉樹活用プロジェクトの中核「MORI TAGシステム」の実証進む

国産広葉樹活用プロジェクトの中核「MORI TAGシステム」の実証進む

神戸大学(兵庫県神戸市、藤澤正人学長)の黒田慶子名誉教授らが2021年9月に立ち上げた広葉樹の資源把握から需要創出までを一気通貫で行う「国産広葉樹活用プロジェクト」が広がりをみせている。

同プロジェクトの中核となる「MORI TAGシステム」が昨年度(2022年度)のグッドデザイン賞を受賞し、その後もバージョンアップを重ねながら、北海道や長野県、兵庫県など5か所で実証事業が進んでいる。その結果を踏まえて、来年度(2023年度)中には正式サービスとしてリリースする予定。黒田名誉教授は、「このシステムを使うことで広葉樹林を資産として『見える化』でき、加工・流通業者や消費者のニーズとのマッチングが進めやすくなる」と話している。

同システムでは、里山で放置されている広葉樹林の毎木調査を行い、立木に電子タグをつけて、樹種やサイズなどに関するデジタル情報を整理し、カタログ化する。カタログ化された情報は木材クラウドシステムに保存し、森林所有者や木材加工・流通業者、消費者らがスマートフォンやQRコードなどを使っていつでもアクセスできるようにする。同システムを利用することによって、どこに・どのような木があるかがリアルタイムで把握でき、伐採前に商談が決まれば、森林所有者などは安心して作業ができるようになる。また、伐採後のトレーサビリティ(生産・流通履歴)が明確化され、家具や楽器などの最終製品を購入した消費者は、使用されている木材の由来や産地(森林)に関するストーリーなどを知ることができる。

長野県の大町市周辺で加工・利用が本格化、稼働停止の製材機が“復活”

「MORI TAGシステム」を使ったプロジェクトの実証事業を行っている長野県大町市周辺では、2月から伐出した広葉樹材を本格的に加工・利用する段階に入る。

プロジェクトに参画しているのは、(株)山川草木(同市、香山(かやま)由人(よしと)社長)、荒山林業(同市、荒山雄大代表)、北アルプス森林組合(同市、割田俊明組合長)、カリモク家具(株)(愛知県東浦町、加藤英樹社長)の4者。

実証地の提供と丸太の伐採・搬出作業は荒山林業が行っており、約0.7haの広葉樹林内の立木に電子タグを取り付け、皆伐を実施して多種多様な広葉樹材(丸太)を取り揃えている。これを2月から北アルプス森林組合が加工する準備を進めており、約5年前に稼働停止したシングルソー製材機を“復活”させて利用する。製材された原盤は、カリモク家具の工場に持ち込み、乾燥を施してから最終製品に仕上げることにしている。

復活”したシングルソー製材機(北アルプス森林組合)

全体のコーディネートを担当している山川草木の香山社長は、「製材された原盤1枚ずつにIDを振り、寸法などを入力するにはそれなりの労力がかかるが、データやノウハウが蓄積されていけば丸太の歩留まりを上げられる。実証事業を通じて必要なデータを見極め、システム全体の完成度を高めていきたい」と話している。

(2023年1月15日取材)

(トップ画像=「MORI TAGシステム」の全体像(デジタルデータの流れ))

『林政ニュース』編集部

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