2021年4月1日付け林野庁人事異動解説、浅川次長去る、主要人物の横顔【緑風対談】

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2021年4月1日付け林野庁人事異動解説、浅川次長去る、主要人物の横顔【緑風対談】

本人もびっくり、林野庁初の女性長官待望論もあったが…

4月1日付けで林野庁の人事異動が発令された*1。国会開会中でもあり、本庁幹部に動きはないとみられていたが、蓋を開けてみたら意外や意外。次長の浅川京子氏(昭和60年入省・東大法卒)が農林水産政策研究所の所長に発令された。誰も予想していないことだった。

内示直後に次長室の浅川氏を訪ねると、「私もびっくりしました」と一言。それはそうだろう。浅川氏は昨年8月に次長に着任したばかり*2*3。仕事ぶりに不足はなく、いずれは林野庁初の女性長官に…という待望論も出ていたほどだ。それなのに、なぜ今代わるのか。しかも後任発令はなく、次長ポストはしばらく空席になるという。

浅川氏の異動先にいた神山修・農林水産政策研究所長(昭和60年・早稲田大政経)は、4月1日付けで山形県が開学準備を進めている東北専門職大学(仮称)の「専門職大学推進監」に転じた。部長級の新設ポストであり、同大学の開学時には学長に就くとみられる。ちなみに神山氏は、平成20年4月から翌21年7月まで、林野庁で経営課長をつとめている*4。

調査研究機関の所長ポストは空席にして、浅川氏は次長にとどめる選択肢はなかったのかとも思うが、人事には様々なファクターがからむ。農林水産省全体でみると、次の幹部異動は7月1日になるとの観測が強い。国会は会期が終わり、畜産局などが新設されるからだ。だが、畜産分野では関連業者との会食接待問題がくすぶっており、人材登用が思うに任せなくなる可能性がある。それも考慮して人事のプランは幾重にも練られているのだろう。浅川氏の異動は、複雑に張り巡らせた伏線にかかわっているのかもしれない。

北海道局長に猪島氏を起用、九州は局長以外の顔ぶれ一新

技官幹部の異動評に移ろう。北海道森林管理局長の原田隆行氏(昭和61年・鹿児島大)が退職した。後任は、森林研究・整備機構理事の猪島康浩氏(昭和60年・宮崎大)。
 
昨年4月に九州森林管理局長から北海道入りした原田氏は、「やはり『百聞は一見に如かず』でした」と振り返る。チップ業を営む家に生まれ、林野庁に入ってからも豊富なキャリアを積んできた原田氏。その人が口にする「大事なのは局・署の現場」という言葉には説得力がある。リタイア後も、林業界で活躍してくれるだろう。

猪島康浩氏

北海道局長に就いた猪島氏も原田氏と同様、物事の表にも裏にも通じたオールマイティーな技官である。本庁で治山課長と木材産業課長をつとめており、もっと早く局長に出てもよかったのだが、人事にはタイミングと巡り合わせがある。北海道勤務は初めてで、「不安もあるけど楽しみです」。機構理事として48万haに及ぶ水源林造成事業を指揮してきたが、「北海道国有林は65万haもある。本当に大きい」とトーンを高める。局長としての手腕に注目だ。58歳。

各局で幹部層に動きがあったが、斬新だったのは九州局。ナンバー2の業務管理官に中部局森林整備部長の川戸英騎氏(平成元年・東大)、総務企画部長に本庁林政課管理官の岩井広樹氏(昭和58年・帯広三条高、専攻32期)、計画保全部長に本庁研究指導課森林保護対策室長の山根則彦氏(平成4年・農工大修)、森林整備部長に本庁林政課広報官の大道一浩氏(平成7年・三重大院)がそれぞれ就任。何と小島局長以外は総替わりとなった。
その中で、一際アクセントとなっているのが大道氏。100㎏内外のふくよかな体躯で何ともいえない愛嬌がある。コロナ自粛を機に節制につとめ7㎏ほど減量したというが、外見的には変化なし。そろそろ家庭を持ってもいい頃かもしれない。

大道一浩氏

滋賀県知事の求めで初の出向者、女性初の企画調整課長も

都道府県との交流人事もみておこう。滋賀県に初めて出向者が出た。経営課課長補佐(組合組織班担当)の樽谷宣彦氏(平成13年・九大院)が同県琵琶湖環境部森林政策課長に就任。三日月大造知事が林業振興を担える専門家の派遣を求めたという。樽谷氏は、近畿中国局などで勤務した。土地勘があるのは強みだ。

山梨県森林環境部技監の増田義昭氏(平成6年・東大院)が本庁に戻り、研究指導課森林保護対策室長に着任。入れ替わりに、同県森林整備課長に経営課課長補佐(特用林産企画班担当)の上野真一氏(平成10年・山形大)が出た。上野氏は、平成21~22年に長野県の信州の木振興課で企画官をつとめて以来10年ぶりの県勤務。温厚で人柄がいいというのが定評だ。岩手県の盛岡一高出身。

福井県の県産材活用課長をつとめた鈴木清史氏(平成12年・筑波大院)が木材産業課の総括課長補佐に戻った。後任として白羽の矢が立ったのは業務課課長補佐(総務班担当)の福島行我(ゆきや)氏(平成13年・北大)。福島氏は、緑資源機構談合事件の後処理や環境省で廃棄物問題に取り組むなどタフな職務をこなしてきた。陽性な人物で「笑い声が大きい」(周囲の声)。趣味兼健康法は散歩。

空席となっていた森林利用課森林集積推進室長に、高知県で林業振興・環境部の部長まで任された川村竜哉氏(平成5年・農工大)が就任。入れ替わりに高知県の副部長に武藤信之氏(平成8年・名大院)が出た。武藤氏は、飄々としているが、なかなかのアイディアマンで、リスク管理能力も高い。小学生のサッカーコーチの資格を持っており、土日はもっぱらグラウンドで過ごすという。

紙幅が尽きたが最後に1人だけスポットをあてる。民間企業の(株)物林に出向していた齊藤政子氏(平成20年・筑波大)が東北局の企画調整課長に就いた。局のよろず相談窓口と言われるこのポストは、文字通り調整能力を磨いて、仕事の幅を広げる機会になる。意外なことに、女性が起用されるのは初めてだ。それだけ齊藤氏への期待値は高いといえる。飛躍の場としてもらいたい。

『林政ニュース』編集部

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