「Soko−co(ソココ)」の最新版発売、圏外ゼロへ スマホ+トランシーバーで通信環境が改善

北海道 北海道

「Soko−co(ソココ)」の最新版発売、圏外ゼロへ スマホ+トランシーバーで通信環境が改善

(株)ブレイクスルー(北海道札幌市、北原健太郎社長)が開発した林業専用コミュニュケーションシステム「Soko-co Forest」がバージョンアップを重ね、最新版を6月14日にリリースした。林内での“圏外ゼロ”達成に向けて、普及を本格化させることにしている。

「Soko-co Forest」は、専用アプリを搭載したスマートフォンやトランシーバーなどで構成され、林内でトランシーバーのデータ通信を活用し、電波の届かない状況を解消する。スマホ等で受発信する位置情報を使って作業員や林業機械の現在地や伐採木・土場のポイントなどをリアルタイムで“見える化”でき、コミュニュケーションの円滑化や管理業務の効率化などが図れる。

開発初期からブレイクスルーと二人三脚の体制で現場作業を進めている(株)小玉(北海道苫小牧市)の小玉一博社長は、「『Soko-co Forest』には大きなメリットが3つある。1つ目は安全性の向上、2つ目は生産性の向上、3つ目は誤伐リスクの低減だ」と説明する。

「Soko-co Forest」の使用中に作業員が林業機械の伐倒エリアなどに入るとアラートが鳴り、危険回避ができる。

事故や労働災害に巻き込まれたときも、メッセージの発信や作業場所の確認などがスピーディに行え、安全性向上につながる。

小玉社長は、「Soko-co Forest」を使うことで、「フォワーダの行き違いがなくなって運材効率が向上し、現場によっては生産性が2割以上高まった」とし、「作業の進捗管理もアプリでできるので、日報作成などが省力化され、残業時間ゼロが実現できた。また、(森林所有の)境界近くでは誤伐の可能性があるため紙地図を確認しながら作業をしていたが、スマホ等の位置情報を活用することでスムーズに作業できるようになった」と評価している。

LPWAの限界をケンウッドと連携して克服、奥山にも挑戦

「Soko-co Forest」が開発された当初は、LPWA(Low Power Wide Area)という通信規格を利用し、専用アンテナや端末を介してデータ通信を行っていた。

だが、林内で“圏外ゼロ”を実現するためには、さらなる技術開発が必要との認識が関係者の間で広がった。そこで、ブレイクスルーの北原健太郎社長は、鹿児島大学大学院の修士課程へ入学。同大学の寺岡行雄教授の下で、「森林が電波減衰に及ぼす影響」というテーマで研究を進め、LPWAによる通信環境の改善には限界があることがわかり、新たな解決策を検討しているときに、大手音響メーカーの(株)JVCケンウッド(神奈川県横浜市、江口祥一郎社長)からトランシーバー活用の打診があった。

これを受け、北原社長は、トランシーバーを活用したアプリや端末を試作し、開発とは別に研究成果を修士論文としてまとめ、今年(2023年)3月に鹿児島大学を卒業した。

研究成果を活かした最新版の「Soko-co Forest」では、林内での通信距離が約3kmまで伸び、安定性も高まった。装備についても、トランシーバーとスマホ等のみとシンプルになり、携行性が向上した。

「Soko-co Forest」の価格(セット一式)は、買い切りで約230万円。販売・メンテナンスは全国に拠点を持つケンウッドが行い、ブレイクスルーは開発に注力する体制をとっている。

今後に向けては、米国のスペースX社が展開している衛星通信技術「スターリンク」を活用して、奥山でも“圏外ゼロ”を実現する検討会が長野県と岐阜県で開催され、実用化を目指している。

ブレイクスルーの北原社長は、「強力な電波で林内でも通信できるトランシーバーを使うことで新しい道が開けた。これからも最新の技術を積極的に取り入れていきたい」と話している。

(2023年6月14日取材)

(トップ画像=「Soko-co Forest」の概要)

『林政ニュース』編集部

1994年の創刊から早30年! 皆様の手となり足となり、最新の耳寄り情報をお届けしていきます。

この記事は有料記事(1653文字)です。
有料会員になると続きをお読みいただけます。
詳しくは下記会員プランについてをご参照ください。