新・全国森林計画策定へ、検討作業始まる 10月頃決定、再造林率引き上げなどが課題

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新・全国森林計画策定へ、検討作業始まる 10月頃決定、再造林率引き上げなどが課題

森林整備などの目標値を含めた新しい全国森林計画の検討作業が始まった。新計画は、来年度(2024年度)から15年間を期間とし、伐採立木材積、造林面積、林道開設量、保安林の指定面積などの計画量を定める。主伐・再造林を進めて人工林の若返りを図りながら、森林の多面的機能を発揮させる“目指すべき姿”を具体的な数値で示すことが課題になる。

全国森林計画は、民有林を対象とした「地域森林計画」(都道府県知事が策定)と、「国有林の地域別の森林計画」(森林管理局長が策定)の指針になるもので、農林水産大臣が森林法に基づき、5年ごとに10年を1期として樹立する。現行計画(2019年度~2034年度)は2018年10月に閣議決定され、2021年6月に新しい森林・林業基本計画が策定されたことに伴って見直しを行った。*1

今年(2023年)10月に現行計画の策定から5年が経過することを踏まえ、野村農相は、4月25日に開かれた林政審議会で新計画の策定について諮問した。同審議会では、林野庁が作成する新計画の案について検討し、パブリックコメントを踏まえて9月上旬に答申を行い、10月頃に閣議決定するスケジュールが描かれている。

現行計画の計画量と2021年度までの実績(平均値)はトップ画像のとおりとなっている。主伐の実施率は119%に達しているのに対し、間伐は60%にとどまっており、主伐シフトが進行している。その中で、人工造林の実施率は49%と5割を下回っており、再造林が進んでいないことが読み取れる。新計画の検討にあたっては、計画量と実績の乖離をどう埋めていくかが主要論点の1つになるとみられる。

国内森林の総蓄積が約56億m3に増加、総面積は横這い続く

林野庁は、新しい全国森林計画の検討作業がスタートしたことに併せて、5年ごとに実施している「森林資源現況調査」の最新データを公表した。同調査は、都道府県と森林管理局から集めた資料(森林簿等)をベースにして行っている。昨年(2022年)3月末時点での集計結果によると、国内森林の総面積は2,502万haで5年前(2017年3月末)の前回調査(2,505万ha)とほぼ変わらず、横這いが続いている。一方、森林の総蓄積は55億6,000万m3で、前回調査の52億4,200万m3を3億1,800万m3上回り、一貫して増加基調となっている。  

なお、林野庁が1月31日に公表した第4期「森林生態系多様性基礎調査」では、国内森林の総蓄積は約86億m3と推計され、「森林資源現況調査」の約56億m3とは差が大きい。林野庁によると、その原因は「調査手法の違いによるもの」(計画課)であり、「森林生態系多様性基礎調査」の結果は森林簿の精度向上などに役立てていく方針。政策検討などの基礎資料には、「森林資源現況調査」の数値を用いることにしている。

(2023年4月25日取材)

『林政ニュース』編集部

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