【譲与税を追う】山梨県都留市

【譲与税を追う】山梨県都留市

地元材で「谷村城下町」を新たな観光拠点に!人づくりも推進

都留市役所の最寄り駅は、富士急行大月線の谷村町(やむらまち)駅。1時間に1~2本しか電車が止まらず、駅前は閑散としている。だが、ここを新たな観光拠点に育てようとする取り組みが始まっている。

谷村町駅には、「谷村城下町」という副駅名がついている。山梨県で著名な城跡といえば甲府城跡(甲府市)。しかし、都留市にもかつて谷村城があり、政治・経済の中心として栄えた歴史を持つ。

「黒塀」に付けたプレートには森林環境譲与税を活用していることを明記している

その賑わいを取り戻そうと、森林環境譲与税を使った「谷村城下町テイスト黒塀塗炭事業」が2020(令和2)年度から行われている。市内で採れた孟宗竹を原料にした「塗炭」で着色した「黒塀」で江戸情緒を感じさせる街並みを再現しようというものだ。

同事業には、20年度に約470万円、21(令和3)年度と22(令和4)年度はそれぞれ約280万円の譲与税を充て、市役所の周辺から「黒塀」の設置を進めている。富士急行大月線の線路沿いにも「黒塀」エリアを広げており、電車の乗客にとっても印象的な景観ができつつある。

線路脇にも「黒塀」を広げている

同市は、富士山・富士五湖エリアの外側に位置し、「観光客を呼び込みたいが、素通りされやすい」(関係者)という悩ましい立地にある。人口は約2万9,000人で、じわじわと減りと続けており、民間の有識者グループ「人口戦略会議」が4月24日に発表したレポートでは、「消滅可能性自治体」にランクされた。この流れを反転させるべく、譲与税を活用しながら「富士の麓の小さな城下町」として魅力度を高めていくことにしている。

「森の学校」など継続、「活用の方向性」を示し課題解決に挑む

都留市の森林面積は1万3,633haで、総面積の約84%を占めている。人工林のうち9齢級以上の伐採適期林分が約80%に達しているが、材価の低迷などでなかなか手入れが進まない。林業就業者数も約50名(20年度国勢調査)にとどまっている。

決して林業が盛んとは言えない同市に、毎年度約2,400万円の譲与税が交付されている。20年度までは基金への積み立てが多かったが、22年度からは森林所有者の意向調査や木材利用・普及啓発事業などへの支出を増やしており、前述の「谷村城下町テイスト黒塀塗炭事業」と相まって譲与税をフル活用する段階に入ってきている。

南都留森林組合の事務所

その中で特筆されるのは、担い手の確保・育成に力を入れていること。市内にある南都留森林組合とタイアップして「森の学校」を毎年度開校しており、今年度(2024年度)も20名の定員がすぐに埋まった。「卒業生が市内で林業関係の仕事に就くことも多く、今後も継続していく」(同市産業建設部産業課)という状況だ。小中学生向けの「ジュニアフォレスターズクラブ」の運営や、レーザーカッターを使った木製品づくりなども譲与税を使って行っている。

同市は、譲与税の交付開始にあわせて「活用の方向性」を市民に示し、①都市部向け環境教育の充実、②林業担い手不足の解消、③つる観光とのマッチング──の3つを重点課題に設定した。これらの課題解決に向けた歩みが着実に進んできている。

市職員の木製ネームプレートも譲与税でつくった

(2024年5月15日取材)

(トップ画像=谷村町駅、まだ駅前は閑散としている)

『林政ニュース』編集部

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