ESG投資を木造・木材利用に呼び込め! 林野庁が初の「手引き」作成、普及図る

ESG投資を木造・木材利用に呼び込め! 林野庁が初の「手引き」作成、普及図る

世界的に拡大しているESG投資(注1)などを木造建築や木材利用に呼び込むためのガイダンス(手引き)を林野庁が初めてつくった。木材製品の炭素貯蔵量や建築物のライフサイクル全体を通じた温室効果ガス削減量などを客観的な指標で評価できるようになっており、「異業種を含めた幅広い関係者に活用してもらいたい」(担当の木材産業課)と普及を図っている。

ESG投資を巡っては、金融関係者等の間で「グリーンウォッシュ」(注2)への懸念も強まっており、信頼できる評価手法によって環境に関する情報を積極的に開示することが求められている。ただ、環境評価の手法には国内外で様々なものがあり、国(政府)が中立的な立場から“交通整理”をする必要性が高まっていた。

林野庁は、建築・木材・不動産分野の有識者で構成する委員会(委員長=服部順昭・東京農工大学名誉教授)を設置して検討を進め、「建築物への木材利用に係る評価ガイダンス」を作成し、3月末にウェブサイトで公開した。サイトはこちら

同ガイダンスは、①カーボンニュートラルへの貢献、②持続可能な資源の利用、③快適空間の実現──の3分野から木材使用などによる環境改善効果を評価できるようになっており、情報開示の参考事例も収録している。建築物のライフサイクルカーボンに関する概念図も示して、新築・改修・解体時に発生する「エンボディドカーボン」を削減することが重要であり、木材製品を使用することが有効な手段になると解説している。

(注1)ESG投資=環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)を考慮して投資すること。グローバル企業などが経営戦略の根幹に位置づけるようになっている。

(注2)グリーンウォッシュ=実際には環境改善効果がないのに、環境配慮をしているように装い、ごまかすこと。

(2024年5月2日取材)

有識者委員会メンバー

  • 服部順昭・東京農工大学名誉教授
  • 青井秀樹・国立研究開発法人森林研究・整備機構森林総合研究所林業経営・政策研究領域チーム長(木材利用動向分析担当)
  • 安藤範親・(株)農林中金総合研究所基礎研究部主任研究員
  • 北川哲・(株)価値総合研究所不動産投資調査事業部副主任研究員
  • 岩田央・(株)日本政策投資銀行アセットファイナンス部調査役
  • 小林道和・(一社)日本建設業連合会木造・木質建築普及ワーキングチーム環境・木質建築情報サブワーキングチームリーダー
  • 柴原尚希・中部大学工学部都市建設工学科准教授
  • 田村好史・(一社)不動産協会事務局長代理
  • 西岡敏郎・(一財)日本不動産研究所業務部上席主幹
  • 安永正治・(一社)全国木材組合連合会常務理事
  • 森田一行・(一社)全国木材組合連合会常務理事

『林政ニュース』編集部

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