スイーツやホテルも手がける老舗材木屋・丸山木材ホールディングス【突撃レポート】

スイーツやホテルも手がける老舗材木屋・丸山木材ホールディングス【突撃レポート】

12月8日、東京・銀座に老舗材木屋がプロデュースするスイーツ&コスメショップ「meet tree GINZA」がオープンした。運営しているのは、丸山木材ホールディングス(株)(岐阜県中津川市、丸山大知社長)のグループ会社である(株)meet tree(ミートトゥリー)(同)。丸山木材HDは、木材関連事業や電子製品の製造、道路関連事業、ホテル事業などを幅広く展開しながら、国産材の“出口”を広げている。

「山徳 材木屋スイーツ」の暖簾をかけ、特産の栗菓子を提供

銀座の一等地に開店した「meet tree GINZA」の玄関には「山徳 材木屋スイーツ」の暖簾がかけられ、店内では栗スイーツが販売されている。

丸山木材HD(ホールディングス)が拠点を置く岐阜県中津川市は「木曽桧」の産地であるとともに、栗きんとん発祥の地としても知られる。江戸時代には、江戸と京都・大阪を結ぶ宿場町として栄え、特産物である栗を使った菓子が多くつくられた。今も市内には多くの栗菓子店が立ち並ぶ。

山口正シェフ監修のクリームマロングラッセ「YAMAGUCHI」、1,800円(税込)

その伝統を踏まえて、「meet tree GINZA」では全14種類の栗スイーツを提供している。飲食店口コミサイトのイタリアンランキングで全国2位になったこともある京都祇園の完全紹介制イタリアン「やまぐち」の山口正シェフも一部監修しており、ラインナップは洗練されている。中津川市出身の山口シェフは、「栗きんとんの素朴な味わいを活かしながら、現代的な洋菓子に仕上げた」とコンセプトを語っている。

コスメブランドも充実、「木」に「会える」商品を届けていく

「meet tree GINZA」のスイーツエリアの奥には、コスメエリアがある。meet treeは、2018年にボタニカルコスメブランドを掲げて創業し、雑貨やスイーツの販売、店舗経営と業容を広げ、すでに岐阜県内に3店舗を有する。

「meet tree GINZA」のコスメエリア、材木屋をイメージした店内は成瀬・猪熊建築設計事務所(東京都杉並区)が設計した

コスメ・雑貨のラインナップは約50種類で、ヘアケアやボディケア商品からアロマオイルやペット商品まで揃える。合成香料や合成着色剤、シリコーンなどの添加物は一切使用せず、精油の原料にはヒノキ、スギ、クロモジの3種類を使っている。コスメ商品は、出産祝いなどのギフト需要にマッチしており、堅調な売り上げを維持しているという。

「meet tree GINZA」のオープンに合わせて、12月8日には日本航空(株)(東京都品川区、赤坂祐二社長)と連携して開発した消臭アロマミスト「HINOKIアロマミスト」シリーズの販売も開始した。同シリーズは、名古屋のホテルなどでもサンプルが客室に設置される予定だ。

丸山木材HDの丸山大知社長は、オープニングセレモニーの挨拶で、「meet treeの社名は、『木』に『会う』と書いて『桧』になることに由来する。桧をはじめ国産材に出会える商品を世の中にもっと届けていく」と述べ、「来年(2024年)は桜のスイーツとコスメを発売する。外国人スタッフも採用しインバウンド(外国人観光客)の需要も掴んでいく」との構想を示した。

4年間で8社を傘下に収める、消費財を軸に海外市場も開拓へ

丸山木材HDは、1916年に岐阜県岩村町(現・恵那市)で木材業として創業した。以降、ガソリンスタンドや道路関連、電子製品製造などの事業に進出し、幼稚園や保育園の運営も手がけ、家づくりから子育てまで日々の暮らしを支える総合型企業になっている。

グループ会社は10社に達する(リスト参照)。グループ全体の総売上高は約90億円、総社員数は約400名。主な稼ぎ頭は、モーターや電子基盤の製造事業及び道路関連事業などで、木材関連事業は後塵を拝しているのが現状だ。

  • 丸山木材ホールディングス株式会社(木材・住宅資材販売/建築/不動産/ガソリンスタンド)
  • 株式会社イワビシ(モーター関連製品製造/電子基板実装・製品製造/木製品製造/換気装置部品製造)
  • 東海道路株式会社(道路標識・ライン施工/土木用建設資材販売)
  • MFP合同会社(木材加工・販売)
  • 株式会社meet tree(化粧品販売)
  • 株式会社ヤマキチ木材(木材販売/プレカット)
  • 株式会社木構堂(設計)
  • 株式会社コーテック(化粧品製造)
  • 株式会社レインボー(製紙用チップ販売)
  • 有限会社今井運送(木質チップ製造)

祖業を建て直すべく、2019年からM&A(Mergers and Acquisitions、合併と買収)を繰り返して8社を傘下に収め、事業基盤を強化してきた。丸山社長は、M&Aなどを進める際の基本方針について、「事業・商材のリピート性があるかどうかで判断する」と言う。

丸山大知・丸山木材ホールディングス社長

丸山社長は、大学卒業後、住友林業(株)(東京都千代田区)で5年間勤務し、2007年に同社に入社、2019年に現職に就いた。「入社してからの約15年間で地域の住宅着工戸数は半減した。これからはリピート性が高く、仕組み化しやすい事業が不可欠。コスメやスイーツなどの消費財は、地方から都市部や海外へと販路の可能性が広がる。国産材への関心が薄い若い世代や女性の方々にもコスメなどを通じて発信していく」と明確に話す。

新規事業として昨年(2022年)、中津川市内にホテル「お宿Onn中津川」を開業し、内装材に地場産ヒノキをふんだんに用いた。木材を使用したホテルアメニティ商品の開発にも力を入れている。

今後の事業展開について、丸山社長は、「林業会社のM&Aも進めており、伐採から加工まで一気通貫の体制を構築したい。併せて、meet treeやホテル事業などの“新しい芽”を育てることで、国産材の良さを都市部や海外に伝えていきたい」と意欲をみせている。

(トップ画像=「meet tree GINZA」(東京都中央区)の外観)

『林政ニュース』編集部

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