珪藻土と消石灰、麻などでできた“呼吸する壁”にこだわる
ウレシイコルセのショールームは、オフィスビルの地下にある。一歩入ると空気が全く違う。暖房を使用していないにもかかわらず、温かく、柔らかい。この心地よさをもたらしているのが「ウレシイカベ」だ。
同社のオリジナル商品である「ウレシイカベ」は、植物性プランクトンが堆積した珪藻土と消石灰、麻などからできている。自然素材100%の壁材料(上塗り)であり、とくに珪藻土にはナノレベルの気孔があって保温性、調湿性に優れる。“呼吸する壁”といってもいい。
一般的な住宅では、施工が容易で安価なビニールクロスが全盛だが、通気性がなく、過去にはシックハウス問題なども引き起こしてきた。これに対し、同社は珪藻土を使った壁にこだわり続けることで存在感を高めてきた。そこには、森本健一代表(47歳)のある“覚悟”が込められている。
26年前に創業、社員10名を擁する会社に成長後、事業を休止
岡山県で生まれた森本代表は、国立津山工業高等専門学校を卒業後、22歳のときに津山市で空間工房(後に「ウレシイコルセ」へ社名変更)を立ち上げ、珪藻土壁の販売・施工事業をスタートさせた。森本代表は、自ら鏝を持って壁を塗る「職人」としても精力的に活動。2004年には、地元工務店がスギムク材と珪藻土壁で建てる自然素材の家を売り始めた。こうした過程を通じて、同社の施工力なども評価され、左官職人、事務員合わせて10名の社員を抱える会社に成長、最盛期には老舗珪藻土壁メーカーのシェアの約10%を取り扱うまでになった。

しかし、2012年に同社は事業を休止する。その理由を、森本代表はこう振り返る。「僕が追求したい『人から微生物まで喜ぶ空間』を実現できる気配がなかった。珪藻土壁のつくり方、塗り方のすべてを根本からつくり直す必要があった」。
「素材と対話」し「物質の年齢」を見極めながら連携を広げる
“仕切り直し”を決断した森本代表は、社員の独立や転職などをサポートし、新たな進路が決まったことを見届けた上で、2014年から「ウレシイカベ」の製造・販売に着手した。これまでの施工実績は約4,000m2に及んでいる。「ウレシイカベ」の価格は、上塗り材だけであれば10㎏で1万円、下地材も合わせると18㎏で1万2,000円。採用事例は住宅だけでなく、店舗やヨガスタジオなどにも広がっている。

空間工房の創業から数えると26年目に入った森本代表が追求し続けているのは「素材と対話するものづくり」であり、今も自ら工場へ足を運んで「ウレシイカベ」を製造する。「利益だけを考えたら非効率だが、製造から施工まで自分の手でやって人が笑顔になれる空間をつくっていきたい」――こう話す森本代表は、「物質には年齢がある。年を重ねるほど落ち着いた存在になってくる。ムク材とビニールクロスでは赤子と大人ほど違うが、珪藻土壁であればムク材のよさを最大限に引き出せる」と続け、「本物をつくっている人達とさらに連携してものづくりを進めたい」と語った。
(2021年1月15日取材)
(トップ画像=「ウレシイカベ」が施工されたショールーム)
『林政ニュース』編集部
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