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スギのLVLと組み合わせて収縮や変形などの問題をクリア
センダンを使ったオフィス家具を「Vicenda Series(ヴィチェンダシリーズ)」としてマーケットに投入するまでに、具体的にどのような工夫を凝らしたのか。
センダンなど国産材を活かしたオフィス家具が環境や健康にいいことは比較的理解されやすい。しかし、製品化するには、オフィス家具として求められる品質や機能を備えることが大前提になる。
品質面で言えば、製品そのもの強度や耐久性、さらに熱や湿度など環境変化に対する耐候性、木目や色調の均一性が求められる。
機能面では、サイズやカラー展開などの拡張性やメンテナンス性に加え進化するオフィス環境への対応が重要だ。
それだけの要求事項をクリアするのは大変だ。
とくに苦労したのは、家具材としての利用実績がほとんどないセンダン特有の収縮や変形といった課題をどう乗り越えるかだった。鍵は建築用材のLVLだった。
建築用材のLVLをどうやって使っているのか。
LVLを短冊状にスライスし、90度回転させて貼り合わせた板を基材とし、表面にセンダンのツキ板を貼って天板に仕上げている。オフィス家具としては、初めてのつくり方だと思う。

「営業トークスクリプト」の作成など社内向け啓蒙活動にも注力
そういう技術的な工夫があってセンダンを活かした製品を発売できたわけか。
センダン製品をマーケットに本格的に投入するにあたっては、社内向けの啓蒙活動も必要だった。
オフィス家具のスタンダード製品は、表面材に均一品質のメラミン化粧板、構造材にはスチールやアルミニウムを使うのが一般的だ。そこにダイナミックな木目を持つ天然木(センダン)製品が加わると、営業担当者らは当然戸惑うし、「どう売ればいいのか」という声も聞かれた。
どのようにして社内の理解を得たのか。
センダンは自生木しか流通しておらず、使用する材によって木目や色が大きく異なる。従来、他の樹種では均一性を重視して選別していたが、センダンではそれができない。そこで、これまでNGとされていた木目や節、色の写真を撮り、天然木ならではの魅力として丁寧に伝えた。
また、センダンは他の広葉樹よりも二酸化炭素(CO2)吸収量が高く、脱炭素や社会貢献という観点で社内の理解を深めるとともに、それに共感いただける顧客へ価値を伝えられるように準備を進めた。
そうした考え方を大勢の社員が共有するのは、簡単なことではないだろう。
社内啓蒙のツールとして「営業トークスクリプト」を作成し、顧客に伝えやすい情報やデータをまとめて、営業担当者が自信を持って語れる状態を整えた。
さらに、社内勉強会や製造工程の視察、品質管理メンバーを伴って福岡県大川市の工場を訪問するなど、会社全体の理解を深める取り組みを進めてきた結果、現在では弊社カタログのトップページにセンダン製品を掲載するようになっている。
「MOKURALプロジェクト」で森林循環につなげ、推進
これからセンダンを用いた製品は、どのように展開していく考えなのか。
弊社は、国産材を活用してオフィス環境をつくり、人と地球(森)を元気にすることを目標に、2022年から「MOKURAL(モクラル)プロジェクト」を推進している。センダンと国産針葉樹を活用した「Vicenda Series」は、そのプロジェクトから誕生した最初の製品だ。
センダンをオフィス家具の材料として使うだけでなく、森林づくりにまでつなげようとしているのか。
センダンを軸にした資源循環モデルは、福岡・大川家具工業会が推進する「センダンサイクル」に弊社独自の役割を担いながら展開している。
その役割とは、利用期を迎えた日本の針葉樹を計画的に伐採し、家具材として有効活用することだ。
伐採跡地にはセンダンを植樹し、新たな循環を生み出すことで、森と産業の持続可能なサイクルを形成している。福岡県でのセンダン植樹祭には毎年、弊社の社員が参加し、地域との交流も広がっている。

新製品の開発スピードを高め、新たな木質オフィス空間を提案
最後に、センダン製品が販売の最前線ではどのように受け止められているのか、率直な反応を教えて欲しい。
「Vicenda Series」を導入いただいた企業からは、「GX(グリーントランスフォーメーション)を進めるコンセプトと、“スチール×ウッド”のハイブリッドという特徴がマッチしていたことが導入の決め手となった」という評価をいただいている。
また、弊社の営業担当者からは、大手企業を中心に環境保全への関心が高まっていることや、自治体が地域材の優先利用に取り組んでいることが追い風になっているという声が出ている。
一方で、現時点では製品バリエーションや価格競争力は、課題と考えている。
そうした課題を克服できれば、もっと伸びしろが出てくるということか。
「MOKURALプロジェクト」の次のステップとしては、まず、「Vicenda Series」のアイテムを拡充してオフィス全体の空間提案に対応できるようにしたいと考えている。
また、センダン以外の未活用材も有効利用し、全国規模で地域材を循環させる仕組みづくりを進め、地産地消によってコスト効率を高めていきたい。

(2025年9月5日取材)
(トップ画像=センダンを天板に用いたテーブルを挟んで意見を交わす伊藤部長(左)と遠藤理事長)
『林政ニュース』編集部
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