適地適木の原則徹底を、生育場所や立地条件の見極めが不可欠
シンポジウムの冒頭、林野庁国有林野部長の長崎屋圭太氏が挨拶に立ち、「第1回シンポジウムから6年半が経過し、全国各地で造林から利用に至る様々な取り組みが進んできた。それとともに、新たな課題も見えてきている」と述べた。
続いて、森林総合研究所九州支所の山川博美氏、同研究所木材研究部門の杉山真樹氏、徳島県立農林水産総合技術支援センターの藤井栄氏、三好産業(株)の濱田秀一郎氏、栴檀の未来研究会の福田国弘氏が相次いで登壇し、早生樹の育成に関する最新の研究成果や取り組み事例などを発表した。

(2020年度調査時、杉山真樹氏の発表資料より)
この6年半で早生樹への関心は着実に高まっており、植栽地も広がってきている(図参照)。その中で登壇者が一様に言及したのは、早生樹は“万能薬”ではなく、適地適木を原則として、樹種の特性を踏まえた育て方をする必要があること。この点は、第1回シンポジウムでも指摘されていたが、今回も「早生樹は生育場所を選ぶ」(杉山氏)、「立地条件の違いをよく見る必要がある」(藤井氏)などの発言が目立った。
センダンと国産針葉樹LVLを組み合わせたオフィス家具を展開
早生樹の利用については、プラス(株)ファニチャーカンパニーの伊藤大介氏と渡會塔子氏がセンダンを使ったオフィス家具シリーズを紹介した。東京都渋谷区に事業拠点を置く同社は、センダンの突板(ツキ板)と国産針葉樹LVLを組み合わせたハイブリッド天板などを開発し、国産材の活用を呼びかける「MOKURALプロジェクト」を実施している。

(画像提供:プラス(株)ファニチャーカンパニー)
発表した両氏は、同社の営業サイドから「大手企業を中心に環境配慮の重要性が注目されており提案しやすい」、「確かなコンセプトがあり具体的に語れる商材になる」との評価が出る一方、「価格が大きな障壁となり、企業にとって費用対効果を見出しづらい」、「天然木を使ったオフィス家具はまだ珍しいため、社内外への適切な案内やサポートが必要」などの意見が出ていることを率直に伝えた。
このほか、鳥取県三朝町の町長をつとめる松浦弘幸氏は、荒廃農地を林地転用した実例を報告し、植栽樹種の選定や補助事業を利用した費用負担の軽減対策がポイントになると解説した。
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6年半前の第1回シンポジウムには全国から約300人が参加し、会場は満員となって立ち見も出た。それと比べると、今回の参加者は半減し、一時の熱気は冷めた感も漂う。だが見方を変えれば、早生樹が新規造林樹種から一般的な造林樹種として認知され、際物(きわもの)扱いから脱してきたとも言える。
それだけに今後は、早生樹を使った製品がマーケットで定着し、山元への利益還元を実現することが最重要課題にある。次回(第3回)の全国シンポジウムでは、早生樹を活かした“儲かる林業”の実践例が並ぶことを期待したい。
(2025年8月25日取材)
(トップ画像=全国から約130人が参加した)
『林政ニュース』編集部
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