| 事業者名 | 越井木材工業株式会社 |
| 代表者名 | 越井潤・代表取締役社長 |
| 所在地 | 大阪府大阪市住之江区平林北1-2-158 |
| 創業年 | 1948年 |
| 業種・アンケート種類 | 製品製造事業者(NO.2) |
| 年間原木消費量 | 120,000 m³ |
| 輸送主体 | 委託 |
| 輸送手段 | トラック、RORO船、JR貨物 |
| ヒアリング対応者 | 松本義勝・常務取締役、横長寛裕・総務部物流室長 |
目次
7.2.6.1. 長距離輸送に関わる課題解決に向けて船舶とJR貨物を活用
同社がモーダルシフトに着手したのは約7年前に遡る。その背景には2つの要因があった。
1つは、環境負荷低減への強いコミットメントである。木材という環境親和性の高い素材を扱う企業として、製品のライフサイクル全体における環境負荷の最小化を目指し、製造工程だけでなく輸送段階でのCO₂排出削減にも注力している。
もう1つは、事業拡大に伴う物流網の再構築である。全国規模のホームセンターを対象にした事業の拡大により、北海道から鹿児島県まで広範囲にわたる効率的な物流体制の整備が急務となった。この課題に対応するため、長距離輸送に適した船舶及び日本貨物鉄道株式会社の「JR貨物」の活用に取り組んだ。その際、トラックドライバー不足という業界全体の課題への対応策としても、モーダルシフトは有効な解決策と位置づけた。
具体的な取り組みとして、大阪-九州間、関東-北海道間などの長距離輸送については、主にRORO船(Roll-on/Roll-off船)及びフエリー便を利用している。製品を積載したトラックをそのままRORO船に乗せたり、トレーラーヘッドと貨物部分を分離して貨物部分のみを船舶で運ぶことにより、ドライバーの負担軽減と輸送の効率化を図っている。目的地に到着した後は、自社の支所や現地協力事業者と連携して円滑な配送体制を築いている。

出典:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000005.000107271.html (2025/03/17閲覧)『令和4年度 エコシップ・モーダルシフト事業 優良事業者として『国土交通省海事局長表彰』を木材業界で初受賞!』
JR貨物については、船舶輸送との相互補完を図りながら選択的に利用している。JR貨物で一般的な12フィートコンテナ(内寸約3.6m)では同社の4m製品の輸送に制約があるため、製品特性に応じた最適な輸送手段を選ぶようにしている。
輸送効率を高めるため、約35m³を基本単位とした輸送ロットの設定を行い、トラックや船舶への積載を最適化している。また、製品の比重に応じた積載量計算も行って、過積載の防止と効率性の向上を目指しており、特に積載計算については、製品種類・比重ごとのサンプリングによる詳細なデータベースに基づいて行っている。さらに、製造計画と輸送スケジュールを連携することで、空船・空車発生の最小化につなげている。
7.2.6.2. 木材業界で初めて「国土交通省海事局長表彰」を受賞
同社は、モーダルシフトの導入によって環境面と経営面の双方で顕著な成果を上げている。
環境面での最大の成果は、輸送過程におけるCO₂排出量の大幅削減である。特に関東地方から北海道への製品輸送においては、年間93回のトラックによる小口輸送を、輸送ロットの集約化と船舶輸送の活用により年間9回にまで絞り込んでいる。この取り組みは「令和4年度エコシップ・モーダルシフト事業優良事業者表彰式」において「国土交通省海事局長表彰」を受賞し、木材業界では初となる高い評価を得た。

出典:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000005.000107271.html (2025/03/17閲覧)『令和4年度 エコシップ・モーダルシフト事業 優良事業者として『国土交通省海事局長表彰』を木材業界で初受賞!』
経営面では、長距離輸送におけるドライバーの労働環境改善と輸送力確保の安定化を実現した。「物流の2024年問題」を受けて船舶輸送枠の確保が困難になっている状況下においても、同社は先行者メリットを活かして、問題なく輸送力を確保している。その背景には、船舶会社と長期的な信頼関係を構築してきたことがある。
7.2.6.3. 共同配送システム「BUILD BASE」によって協業を推進
同社は、モーダルシフトに加えて、独自の現場配送システム「BUILD BASE」を開発し、実用化している。同システムは、住宅建設現場への各種建材の効率的な配送を実現する革新的なプラットフォームである。
住宅1棟を建てるには約1万点の建築資材が必要とされ、これは2tトラック換算で40台以上の輸送量に相当する。従来、これらの建材は各メーカーが個別に配送していたが、CO₂排出削減の観点からも効率化が重要な課題となっていた。
この課題に対応するため、同社は提携企業とネットワークを構築し、自社の防腐木材製品だけでなく、合板、間柱、石膏ボード、防水シートなど多様な建材を適切なタイミングで建築現場へ共同配送する体制を確立した。
同システムは、大手ビルダーから受注した住宅等物件の設計図面データをもとに、必要な木材・建材の種類・量を自動計算する機能を持ち、正確な資材発注と効率的な配送計画の立案を可能にしている。提携企業は必要資材を準備し、ビルダーの建築現場からの配送指示に基づいて適時輸送する体制を整えている。
現在、同システムの拠点は、東北圏に3か所、関東圏に18か所あり、各拠点には複数現場向けの必要資材が一括で輸送・保管されている。月間の利用実績は、東北圏で約50現場、関東圏で約600現場に達している。

出典:https://www.koshii.co.jp/products/buildbase/index.html (2025/03/17閲覧)『現場配送システム
『BUILD BASE(ビルドベース)』』
共同配送による最大の効果は、輸送効率の向上である。複数メーカーの製品を一括輸送することによりトラックの積載率が大幅に向上し、必要車両数が減り、輸送コストの低減とCO₂排出量削減という二重の効果をもたらしている。建設現場においても大工や職人の作業スケジュールに合わせた資材供給が可能となり、現場の生産性向上にも寄与している。
同システムの今後の展開方向として、ユーザーインターフェースの改善を図るとともに、自社社有林約850haの立木データとの連携など、サプライチェーン全体の最適化を目指すことにしている。2025年5月には、同システムのバージョン2のリリースが予定されており、より使いやすいインターフェースと情報連携機能の実装が計画されている。
以上のように同社が進めているモーダルシフトや共同配送などの物流効率化は、単独企業の取り組みにとどまらず、複数のメーカーや輸送事業者との緊密な情報共有と協力関係の構築を基盤としている点が特筆される。同社は、今後もこの連携の輪をさらに拡大していく方針をとっている。
つづきはこちら。
目次はこちら。
(株)日本林業調査会
1954年創業。「林政ニュース」の編集・運営・発行をはじめ、森と木と人にかかわる専門書籍の発刊を行っている。